ケレン味の鬼、イタリアジャッロの金字塔
これまた「クリムゾン・ピーク」の影響から、押しも押されぬイタリアンスプラッター映画の超名作「サスペリアPART2」を鑑賞。
今作はいわゆるジャッロ映画と呼ばれる、イタリアで1960〜1970くらいに流行ったホラー・スリラージャンルの映画群の一角で、特にダリオ・アルジェント監督はその旗手とも呼べる監督。
中でも今作は1番有名な映画の1つです。
ちなみにPART2というのは邦題の都合で、実は同監督作の「サスペリア」とは何ら関係が無いばかりか、サスペリアより先に制作されているというあまりにも許され難い裏話もセットで有名。
一昔前の洋画の邦題あるあるですが、マカロニウエスタンやホラー、スプラッターなどのジャンル映画は特に、一匹目のドジョウが掬えれば何匹でも掬おうとする品性のカケラもない愚行です。
さて、そんな今作、感想としてはまず超絶面白い映画です。
脚本の完成度やミステリーとしての整合性など、仕上がりとしては実は瑕疵まみれですが、しかしその分何がなんでも観客を楽しませようとするダリオ・アルジェント監督の旺盛すぎるサービス精神につくづく頭が上がりません。
あらすじは、とある夜偶然殺人事件を目撃したピアニストが、男勝りな女性記者と協力しながら連続殺人犯の正体を追うというもの。
まずはこの後も繰り返し流れる印象的過ぎるテーマソングと共に開幕し、続いてポップな童謡が流れる中、子どもが血のついたナイフを拾うこれまた鮮烈なオープニング。
殺人シーンの前に定期的にインサートされるテーマソングと謎の不気味な小物の接写シーンは、意味不明すぎて癖になる。
監督のこだわり抜いた殺人シーンの数々はとてつもなく恐ろしいし、面白さのためだけに持ち込まれる人形など小道具の数々も楽しい。
ペンキ丸出しの血糊のケレン味も凄まじいし。
あとはいずれも、殺人が起こらないシーンのカメラの動きが不穏すぎてたまらない。
そんなところ映すなよとか、そんなタイミングで動くなよっていう、嫌なカメラです。
シリアスなシーンで何故か強烈にポップな音楽が流れたり、スリラーに全振りしすぎて笑っちゃうシーンが多いのも愛嬌があっていい。
オチや冒頭の挑戦的な仕掛けが超有名な作品ですが、音楽や随所のカメラワークや間の使い方、そして監督自らがこだわって撮った革手袋装着シーンの数々など、見どころたくさんの退屈しない楽しい映画だったと思います。
出来不出来については、少なくともミステリー映画としてはそれほど良くないとは思いますが、好き嫌いでは断然好きな快作でございます。
多少のグロ耐性があれば間違いなくおススメです。