原作の小説はエンターテイメント小説を幻想文学の文体で書くことでロマンチックな表情を醸し出している。いわば文体に寄るところが大きい小説。
なので、どのように映画化されるのか不安でもあった。
兄弟妹の演技は素晴らしかったけれども、いかんせん脇を固める人物の存在感が希薄だった。幻想感もなく、原作とは別物になっている。
それは悪いことではないけれども物足りなさを感じた。
しかしながらきちんと兄弟妹の感情が描かれていて、なおかつ孤独のやるせなさはリアリティがあった。
兄を愛する妹も同性愛も神様は全て受けとめる、というメッセージが込められている。
『悪送球を投げていたのは僕らだった』というセリフが全てなのだろう。
どんな人生も間違いなどないのだ。
さらに言えば自殺した者の人生も肯定する。
本作は原作と違い、家族の物語ではない。マイノリティの物語だ。