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クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代のSadAhCowのレビュー・感想・評価

3.5
2021 年 113 本目

世紀末ウィーンで活躍したグスタフ・クリムト、エゴン・シーレらの作品を解き明かす作品。「退廃的」としばしば称される世紀末ウィーン美術だが、当時大流行だったフロイトの精神分析や、『アイズ・ワイド・シャット』の原作として知られる『夢小説』、フェミニズム、グスタフ・マーラーの音楽など、実は通底する一種の「ムーブメント」だったことが分かる。クリムトやシーレの作品は好きなのだが、ここまで同時代の様々なものから影響を受けているのはかなり驚きだった。確かにクリムトの描く女性の不気味さと紙一重の色気とか、当時の「女性像」の変化から解説するととても説得力がある。

19 世紀末は女性が「性」の束縛から解放された時代でもあり、特に写真がそれを後押しした。要するにヌード写真のことなのだが、当時のウィーンでも「画家のデッサンの素材」という名目で、ヌード写真が闇市に流れていたらしい。エロは時代を進化させるのである。

さまざまな気付きのある作品で全般的に良いのだが、ちょっと色々な視点を入れすぎてまとまらなくなった感も否めない(海外ドキュメンタリーあるあるだが…)。特にシーレ作品の「暗さ」は、時代の空気というよりは彼個人の生い立ちに拠るところも大きいのでは…。まあ、あまりにも制作側のストーリーありきの「なんちゃってドキュメンタリー」よりはマシかもしれないが。クリムトやシーレの作品鑑賞というより、ちょっとしたお勉強のために見る作品かと。
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