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パラサイト 半地下の家族のネネのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.3
キム一家は、学歴や信用、お金がないだけで、実際のスキルは兼ね備えている、実力不足が原因で今の貧乏生活になっているわけではないと言う事実がどうしようもない気持ちになる。誰にもどうすることもできない社会の構図によってこんな生活をしている。
ある意味被害者で、生まれつきに近いものでこの映画の誰もが可能性を持っていて、豪邸に住んで大学に通えてきちんとした信用のある人の方が圧倒的に少ないのが恐ろしい。
誰かを傷つけてやろうとか貶めてやろうとか、恨みや辛み、憎しみなどの負のエネルギーが働いているわけではない、マイナス感情のないキム一家が犯罪者になってしまう。このモンスターを作り上げたのは、実際には誰?
他の手を借りなければ買い物も料理も家事も育児も成立させることが出来なかったパク家なのか、格差社会が産んだ軋轢なのか、
誰が悪いとかではないんだと思う。気づかないうちに作られた階級があるだけ。登ることもできるし降ることもできる。けど、自分の望む場所に移動できても定住することはできない。変装は簡単にできても自分の階級の匂いは絶対に消せない。
家が浸水してトイレから水が逆流してるのにタバコを吸う、金持ち一家が遊んで食べて寝ただけの数時間のうちに、どれだけの絶望を知ったのだろう。彼らにはYes以外の選択肢はなかった。だから、パーティーに参加さえしなければあんなことは起きなかったけど、でも行くしかなかったんだなと。そうしなければ生きていく術がないから。
半地下の家族と階級の高い家族、どっちが寄生しているのかはもうわからない。
命を奪う最悪の結果を生んだのは、悪気のない、無意識の中の無神経さだった。目には見えない匂いを軽蔑した態度そのもの。けれど、決して恨んでいたわけではない、無意識のうちにでるものが1番怖い。

「まず、大金を儲け、この豪邸を購入し、お父さんを地下室から解放する」この映画で初めて夢のある話を聞いた。不覚にもこの無謀な夢に応援してしまった。実現率のかなり低い儚すぎる計画に「頑張れ」と応援したくなった。私も何かに寄生し現実を見られていないのかもしれない。計画をしなければ、失敗することもない、結局決めるのもやるのもこの人生を生きていくのも、自分だから。
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