青眼の白龍

パラサイト 半地下の家族の青眼の白龍のレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.7
『殺人の追憶』『グエムル -漢江の怪物-』のポン・ジュノ監督が手がけるサスペンス映画。第72回カンヌ国際映画祭で最高賞を獲得した。半地下に暮らす貧しいキム一家が、策を弄して裕福な家族に寄生しようとする話。貧困問題や社会格差などに切り込む一方、韓国国民の倦怠感、とりわけ底辺層に蔓延する無気力という病が諧謔的に描き出されている。

“地上と地下”という舞台背景は不平等な社会構造の象徴として些かありきたりに感じるが、ストーリーテリングの巧みさが観客の視線を画面に釘付けにする。同じく第71回カンヌで最優秀賞を獲得した是枝監督『万引き家族』にも類似のテーマや設定(他者の存在に寄生して暮らす人々と、彼らを疎外する“善良”な社会)が認められるものの、『万引き家族』が血縁関係なき人々の関係性に焦点を当てていたのに対し、本作では社会的な疎外が横行する層においては唯一血縁関係こそが人間性の拠り所として描写される。日韓の国民性の違いーー儒教的思想の影響が色濃く反映されている形である。
 彼らを地下に閉じ込めているものは無気力である。「無計画」を正当化する者は決して閉塞感を脱することができず、その病巣に気付くことができた者だけが地上に這い上がることができる。2020年を象徴する作品となることだろう。
現代韓国映画を代表する傑作。