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パラサイト 半地下の家族のMinaMiのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
3.9
妖怪というのはこういう人たちを見た人が噂にして、出来上がった存在なんだと思った。寄生する人間。
高台の豪邸から坂を下り、階段を降りてずっとくだったところにある半地下の臭い小屋。実際の高低差で視覚的にも格差を感じる。
高い場所の人たちに寄生する人たち。でも高い場所で暮らしても、決して取れない違う臭い。
父母息子娘と同じ4人構成でも全く違う二つの家族。
一方はパリに移り住んだ有名建築家が建てた家で、アメリカ製の品々に囲まれて優雅な暮らしを送る。(しかし、何かと海外製だから安心という描写が多いのは自国コンプレックスか)
一方は他人のWiFiを盗みつつ、暗い半地下で暮らす。
同じように広い窓から外の景色
が見えるのに、見えているものは全く違う。
『万引き家族』も社会の片隅で生きる名もなき弱者たちの物語だったが、アプローチが全く異なる。日本的とも言えるジメッとした静かな場所でコソコソしながら懸命に生きる姿は涙を誘う。韓国のこの家族は怒りと笑いを振りまきながら逞しく生きている。糞尿や汚物が積み重なった地下の生々しい臭いの中で強く生きている。時には北朝鮮のミサイルすらギャグにしながら、元気に生きている。
意外と怖いシーンもあったが、総じて面白かった。
それと化粧と服で人の印象は全く変わるのも怖い。
観た後にズーンと落ち込んだ。
たくさん映画を観ていると、観賞後、感情が揺さぶられることもなかなか少なくなってきたのに、こんな気持ちにさせられたのはやっぱり凄い映画だと思う。

2021年1月8日追記
上と下の境は目に見えなくてもはっきりしている、異なる臭いが消えることはないのか。強烈な悪意が根本にあるわけではない。それしか生きる術がない人たちの弱さが悲劇の連鎖を生んでいる。分断。世界で起きている格差問題。理解し合えない階層差。悲しみ、憎しみ、やるせなさ。同じ人間に見えても、異星人同士のよう。平和な世界がくるといいのに。
そういう理解を促すために映画はあるんだと思う。
揺さぶられた。

・脚本 8.5/10
・演技 8/10
・演出 8/10
・音楽 6.5/10
総合点 31/40
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