TakamaruSuzuki

パラサイト 半地下の家族のTakamaruSuzukiのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.5
パルム・ドールに続き、オスカーまで獲ってしまっては見逃すわけにいかず、受賞翌日に観賞。ミーハー丸出し…w

アフリカ的な貧困や、借財などから闇堕ちしてしまった人たち(=地下)ほどではないものの、ギリギリの生活水準で暮らすことを強いられている家族を「半地下」という象徴的なメタファーで表現。そんな一家の稼ぎ先となる富裕層の一家の住居は「高台の豪邸」。そんな異なる世界線を生きる家族の群像劇が、ときにコメディに、ときにシリアスに描かれる。

地上と地下ほど分かりやすく分断されていないからこそ「におい」のような小さな差異に敏感になり、自己中心なカテゴライズで人を卑下し、傷つけてしまう。
「差別は異質性の問題ではなく、同質性の問題であり、差異という与件を原因とするのではなく、同質の場に力ずくで差異をつくる運動である」というのは、ナチスのホロコーストに代表される人間の社会心理学的な性質の一つと言われていますが、
映画ではマウントを取られる、持たざる者側として描かれた半地下・地下の家族も、宴席では北朝鮮を卑下するジョークを飛ばしているし、安易な富裕層批判ではなく人の性を暗喩的に批判している点で、よく練られ本質を突いた作品と感じました。ギウ家の長男がインディアンに耽溺したように、いっそ異質である方が、互いを知ろうという心理が働いたりするものなんですよね。(ギウ家のこの姉弟が結構キーパーソンだったなと思いました)
また、区別される側の特権階級への憧れの念というのは禁じ難く、ギウがダヘに「俺はここが似合っているか?」と問うシーンは、この中で自分たちだけが異質であることへの恥辱と、憤りと、上流階級への憧憬の発露。個人的にこのシーンが1番好きでした。

ブラックコメディとしても単純に面白く、半地下の家族が富裕層にパラサイトしていくさまは、くすっと笑えます。この緩急のバランスが絶妙。変に肩肘張らずに見ることができ、その上でしっかり思考のきっかけを与えてくれる。そんな力を宿した作品でした。
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