ひぃろゆぅき

るろうに剣心 最終章 The Finalのひぃろゆぅきのレビュー・感想・評価

3.6
もし、縁が「復讐を果たした後は新時代の人々のためにその権力と財力を使いたい」と宣言して剣心の命だけを付け狙ったのなら……などと考えるようになりました。

刀一本で奮闘する剣心よりも、より良い時代を築くことができたかも知れない。

なにより緋村剣心はそのとき、贖罪のために自分の命を縁に差し出す事が出来るんだろうか? と。

剣心は、立場が違うというだけで罪も無く殺された人たちとその家族に、なにか具体的な謝罪をしたことがあったのだろうか? ここに至るまで。

道を誤ったと思ったなら、師匠のところに戻り懺悔ぐらいはしても良さそうなものだけど、それもしていなかった剣心。

頬に残った十字キズは、傲慢で驕り高ぶっていた剣心が背負わなきゃいけない十字架なわけだけど、はたして薫や仲間たちに恵まれた今の剣心が「これから拙者は、さらに充実した人生を送るでごさるよ」的な終わりで良いんだろうか? 保身ばかりじゃないか? こいつ、と。

……じゃあ、どうなれば良かったのかはわからない。

薫がもし、縁に殺されていたら……剣心は逆刃刀をついに裏返して天翔龍閃で縁の首をはねあげただろう。
縁には姉に対する深い愛があったから、それは出来なかった。カタキは剣心であって薫ではないという常識的な判断が出来ていたのだ。

非常識なのは、大量殺人を犯したにも関わらず「おろ?」などというトボケたワードを発明してごまかし、とっくの昔に新時代を迎えているというのに未だに帯刀しつづける善人ヅラした緋村剣心のほうだ。
新時代の人々が本当に恐れなきゃいけないのは、このキチガイだ。
また、いつ暴発するかわからないのだから。

本来なら、志々雄真実より先に、明治政府が剣心を抹殺しようとする描写がなければいけなかったのではないか?  
その上で、偽善の上に成り立った明治政府は、過激な思想家や武士の生き残りではなく、市民革命によって打倒されるべきだったろう。

そこで初めて本当の新時代がやって来るはずだから。

その時、剣心は自ら市民の手によって焼かれることが出来るだろうか?

僕は、剣心にはできないとニラんでいる。