塩故障

ブラックパンサーズの塩故障のレビュー・感想・評価

ブラックパンサーズ(1968年製作の映画)
3.8
主に1960年代後半から70年代にかけて活動していた、黒豹党(ブラック・パンサー党)についてのドキュメンタリー映画。当党の主要構成員であったボビー・ハットンの逮捕を巡る、彼の解放運動の一幕をカメラに収めた。作品内で映し出される1968年の夏といえば、キング牧師が暗殺された直後の、暴力と不正の剣呑な鉄臭い空気渦巻ける、殺伐とした暗澹たる時節でもあった。アニエス・ヴァルダはそこに潜む、彼の解放運動を巡る物語よりもさらに深い次元に根ざした、人類史における宿痾的な問題へとカメラによって立ち向かおうと試みる。映像の終盤、抵抗のシンボルであった"顔"のイメージが破壊されてしまうが、そういう状況にあって彼女は、彼らブラック・パンサーたちの顔をカメラに収めことによって、永遠に破壊されない不滅のイメージとして、彼女なりの、抵抗の為の最も力強い手段をそこに、見つけ出したに違いなかった。
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