コータ

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 完全版のコータのレビュー・感想・評価

4.7
〈思い出はいつまでも夢の如し〉
ヌードルスはちょっぴり残忍なリアリストで、マックスは野心たっぷりの若手リーダー。二人の友情とすれ違いが物語の核。

ユダヤ系ギャングの波瀾に満ちた物語を、貧しい少年時代の1920年代初頭、ギャングとしてのし上がった青年時代の1930年代初頭、そしてたった一人生き残った晩年のヌードルスがニューヨークへ戻ってくる1968年と、3つの時間軸を互いに行き来しながら描く。
この時間軸を行き来するアイデアは、のちに、セルジオ・レオーネを心より敬愛する映画作家クエンティン・タランティーノが『パルプ・フィクション』にて再現している。

友情と裏切りをテーマにした叙情感溢れるドラマ、レオーネの特徴溢れる演出、ロバート・デ・ニーロら名優たちの演技、エンニオ・モリコーネの旋律、禁酒法時代を再現した美術、時代転換の場面におけるマッチカットが印象的な編集。
それぞれが必要不可欠であり、それぞれの見事な調和が本作の夢のような美しさを形成している。
圧倒的スケールで描かれた史上最大の映像モニュメント。

ちなみに、レオーネは本作の脚本執筆に12年もの歳月をかけたと言われている。
本作は、誰よりもアメリカを愛した彼が、その一生をかけて紡いだアメリカへの恋物語である。

こうしたレオーネの輝く眼差しが向けられたのは1920年代まで。以降のアメリカに対して向けられることはなかったという。彼が本や映画を通して憧れたその頃を私はよく知らない。だが、かつて素晴らしかったアメリカに対する郷愁、そのきっかけがフィクションであることには共感することができる。
その点で非アメリカ人であるレオーネのアメリカ愛と、僕が抱いたアメリカへの憧憬には通ずる部分がある!

ヌードルスの瞳にいつまでも輝いていたあの日の少年時代。思い出はいつまでも夢の如し。
かつて、夢と裏切りの国・アメリカにて。
251分間の記憶の旅。
コータ

コータ