みてべいびー

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 完全版のみてべいびーのレビュー・感想・評価

4.9
映画に完璧なんて存在しないし、アートに完成なんて求められるものではないけど、今まで人生で観てきた数々の映画の中で、この映画が最も完璧と言われるものに近かったと思う。人間が一生のうちに抱く優しさや愛情、痛みや憎しみが四時間ずっと詰まってる。こんな作品が存在すると知れたこと自体が幸せだと思える。
NoodlesのDeborahへの憧れとその昇華とも言うべき悲しい末路が切なすぎる。今まで抱えていた彼女への行き場のない愛情を、自分の手から離れてしまうと知った途端、あんな形でしか消化することができないなんて彼は本当に可哀想。どうしても自分のものにしておきたかったのだろうけど、最後に残るのは虚しさとやるせなさと後悔だけ。駅のホームでの場面は純粋に泣きそうになった。
そしてなんと言ってもNoodlesとMaxの揺るがなき友情。若い頃Maxが溺れたと思ってNoodlesが必死になるシーンが大好き。結局Maxほど冷酷になれなかったNoodlesは彼と全く違う人生を歩むことになるけれど、お互いの弱さをわかってる二人だからこそ許しあえるんだろうね。Maxの方がやり方構わず自分の望んだものを手に入れることに真摯で、その分Noodlesには情や理性が邪魔をした。若かりしNoodlesがDeborahに「君たち二人(DeborahとMax)はよく似ている。だから憎み合うんだ。」と言っていたけれど、結果を考えるとその言葉も悲しい。Maxの最期は観る人によって解釈が分かれそうだけど、私の考えだと本当に苦しくなる。そうであるはずがないと思いたいけど、彼ほどの人間ならやり兼ねない、というかやるだろう。
こんな偉大な映画を切ないの一言で括ってしまうのは間違いだと思うけど、とりあえず今はそれしか出てこない。最後のNoodlesのぶっ飛んだ笑顔が最高に切ないんだ。こんな名作に出会えたことに感謝、今まで生きててよかった。
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