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罪の声のBlueのレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
4.1
脚本/脚色がホントに素晴らしい。原作読んでいてこれを一本の映画にするのは、ちょっと無理ではないか、と思っていました。それくらい原作は切るところがなかった。
この作品をよくぞここまでまとめたなー、と素直に感心したし面白かった。

この映画はグリコ森永事件をモチーフにしてますが、この事件を知らない人やミステリーなど見ない人には前半部分のテンポがゆっくりなところがちょっと入りにくいし、あまり視聴されてないのもこの前半部分がミステリーファン以外には集中力が切れるところかなとも思います。

かなり複雑な事件なので、この事件を理解するにも時間がかかるし、そこから2つの交錯するストーリーを1つにする過程もスリリングに描がなければならないし、これをまとめるのはかなり至難です。
もともと新聞記者が書いた作品ですから徹底的に取材に基づいて作られたストーリー性なので、推理小説的観点で書かれているのとは違いますから、やはり丁寧に取材過程を描かないといけない。その丁寧に描いてるところが大ヒットにまでいかなかった原因かなと思ったりしました。

ミステリー小説として書かれた作品ならば、かつて怯えながら暮らしていた子供時代の傷を持つ大人が母親を探す過程で、記者と会ってかつての過去と幸せに暮らすもう一つの家族と出会うという描き方をしたのではないかなと思ったりしましたが、ここまで説得力あるストーリーはやはり記者ならではですし、この長編小説をまとめた脚本家の野木亜紀子さんの実力はさすがだなと思います。

日本のスーパーなどはなんでもビニールにくるんだりするところがあるけど、それはこのグリコ森永事件があってからではないかな、と思います。

真実の声がこの袋にくるまれて聞こえなくなっていたのを、よくぞ穴を開けて声が聞けるようにしてくれました。それがたとえ罪をはらんだ声であっても、やはりそこに犠牲になった人生があるならば、傷ついたとしても聞くべきだと思います。

こういう社会派ドラマの映画ももっと作られたらな、と思ったりしました。ぜひ見てもらいたい一本です。
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