義民伝兵衛と蝉時雨

アメイジング・グレイス アレサ・フランクリンの義民伝兵衛と蝉時雨のネタバレレビュー・内容・結末

2.7

このレビューはネタバレを含みます

アレサ・フランクリンの美声と歌唱力は勿論凄い。バックコーラス隊の存在もとても良い。腹に響いてくるようなチャック・レイニーのベース音とドラムのリズムも。そして、それを見つめるオーディエンスの表情や反応が何よりも良い。正に熱狂のゴスペルライブ。後半のアップテンポな曲の躍動感には完璧に引き込まれた。熱気に満ちた現場の様子に興奮するものは確かにあった。しかし、信仰とレコーディングと映画撮影という複数の要素が同時進行する現場。単に神への信仰だけには収まりきらない、信仰以外の思惑の臭いも多少なりともする現場の環境に、限りなく無私無欲に近いブレッソン作品の純真さを観た後ではどうしてもまやかしの様に感じてしまう部分はあった。そう思ったのは禁欲的で脱俗超凡なブレッソン作品の圧倒的に素晴らしい余韻が去らぬままに鑑賞したという理由が大きすぎるが、それを抜きにしてももう一つ踏み込んで心に来る決定的なものは見えてこなかったかもしれない。その決定的なものとは、神への熱心な信仰心から見えてくるものだと思うので、神への信仰心を持っていない自分にはその境地を体験することなど当然のことながら出来るはずもなく、その代わりに、神への信仰心を持っている人達にはもう一歩踏み込んだ別次元の感動を味わうことが出来るのだろうということは存分に感じることが出来た。