リッジスカイウォーカー

おとうとのリッジスカイウォーカーのレビュー・感想・評価

おとうと(2009年製作の映画)
4.0
どうしようもない「おとうと」。
散々迷惑をかけるけど、優しい家族に見守られるというのは、一番幸せなのかもしれない。

人間はいつか死ぬ。
それは誰にでも平等に訪れる瞬間。
どのような最期を迎えるか、その時にならないとわからないけど、本作を観て思ったのは、やはり孤独死はあまりにも可哀想だということ。

無縁仏とかさ。
哀れだと、昔親父が言っていたけど、この作品を見てわかる気がした。

そういう意味では映画のセリフにもあった通り、あれだけ憎まれていた「おとうと」は、大好きなお姉ちゃん(ある意味ではお母さん)に付き添われ、そこまで苦しむことなく逝けた分、生きた証を家族に伝えられたことは良いことなんだなぁと素直に思った。

だって死ぬ間際はきっと最悪に辛いと思うんだよ。
どんな苦しみよりもきっと辛いんだと思う。

誰にも知ってもらえず、苦しみもわかってもらえず、最期は迎えたくないなぁ。

人間は歳を取るにつれ、赤ちゃんに戻っていく。
だとしたら、死が自然と目の前に現れてきた時からその瞬間までの時間、また手がかかるようになっていくのは命の摂理なんじゃないかなって思えた。


死に目に会う、看取るというのは多かれ少なかれショックを受けると思いますが、この瞬間までをどう過ごすかが、人生の振り返りと命の尊さを怒涛のように感じる時間なのだと思う。


優しくも淡々と真っ正直に死に目を描いたラストは目が離せず、目頭が熱くなった。

どんなに迷惑をかけたとしても、その瞬間誰もが逝く人の思い出を感じずにはいられない。

だってその人がいなければ、今その時を感じている自分自身という存在もいないのだから。


血縁というのは不思議なものだけど、やはり見えない絆というのはあるんだなぁと思う。

自分の家族の最期をどうやって看取りたいか、それを考えさせられる描写だった。
自分自身の死の瞬間も。
どう死にたいか、というのは選べないかもしれないけど、理想は思い描いていても良いですね。
妻ともどんな死に際が良いか、話してみたい。

病院で延命させられながら死を迎えるのか。
それとも本作のようにホスピスに入るのか。
はたまた自宅でその時を待つのか。

どうしたい?って。
話しておくことは大事なことだよなと思う。
だっていつかは来ちゃうからね。その時。


家族ってめんどくさいけど、気にかけることができるのも家族だからこそ。

家族の在り方を問う監督の姿勢に、いつか訪れる瞬間に対しての示唆を与えてくれました。


歳を重ねるほど良さが増しそうだ。


しかし、この時代背景は昭和のど真ん中ですね。

今じゃ考えられない、コテコテの披露宴。
メンデルスゾーンでの入場。
寒い応援合戦などなど。
博物館レベルの描写が苦笑しっぱなしでした。