やまだ

見えない目撃者のやまだのレビュー・感想・評価

見えない目撃者(2019年製作の映画)
3.5
身内に全盲がいたのでその点も含めてレビュー

主人公と同様に私の身内も後天的に視力を失いました。
そんな姿との比較ですが、吉岡さん演じるなつめの姿は視覚障害者として違和感のない範囲かと思います。

視点の向け方は「実は見えてるんじゃないか?」と思えそうなシーンもあるのですが
先天的ならともかく後天的なものならこんなものかと思います。
私の身内は「もはや視線を向けようとするのはクセだから」といって目を動かしていました。ましてやなつめは視力を失って3年ほどです。健常者的な挙動はむしろリアルかな、と感じました。

身内は目ではなく耳を向けるために頭をクネクネ動かすような動作もしがちなのですがなつめはその点少なめでしたね。
そこは映画的な演出のためかなと思いました。違和感はなかったです。

ただ、視力を失ってから間もないのにあそこまで適応するのは本当にすごいと思いますし「いやそうはならんやろ」というシーンもあるにはあります。
気になる人はなるでしょう。

ストーリーは猟奇殺人犯に誘拐された少女を取り返すために、なつめ春馬コンビが警察と連携して犯人を追うというスリラーとなっています。
R15なだけあってかショッキングな映像もあります。ただ個人的にはそれほど映像的に攻めたようにも見えなかったので「R15だから怖いな・・・」と思う人でも見られると思います。
遺体がアウトな人は見ない方がいいです。

猟奇殺人犯を追うスリラーというと、作品はたくさんありますが個人的にはデヴィッド・フィンチャー監督の「SEVEN」が思いつきました。
犯人の猟奇性や殺人方法などは通じるものがありますし、カメラワークや演出がデヴィッドフィンチャーかな?と思えたのでどこか意識はしてそうです

そんなSEVENに比べると
「味を薄めて視覚障害という要素を足したSEVEN」
という印象です。全体的にあっさり見られますが物足りない人は物足りないでしょうね。

スリラーではありますがあまり強烈にハラハラさせる要素は少なかったです。
割とどのエピソードも短めに終わるので
よく言えば「テンポがいい」
悪く言えば「味が薄い」
といった仕上がりになってると思います。
私は前者、テンポが良くて面白いと思いました。


とはいえSEVENはかなり胸くその悪い作品であるのに対して本作はそんなことはなく王道ど真ん中で終わってくるので
あまりエネルギーをとられる映画はいやだ。って人にもお勧めできます。
この表現が正しいかは分かりませんが「ポップな映画」でした。

さらっと見られる邦画スリラーを見たい方にはおすすめできます。
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