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マー ―サイコパスの狂気の地下室―のJIZEのレビュー・感想・評価

3.7
オハイオ州を舞台に孤独に暮らす女性"スー・アン"と偶然出会った若者たちが直面する恐怖が描かれるスリラー映画‼︎ブラムハウス配給作品として日本では未公開ながら配信を楽しみにしてみた。まず主演オクタヴィア・スペンサーの"怪異と屈強"を併せもつ強烈な怪演が、映画の世界全体を圧迫気味に征服していて、開幕数分で彼女の異様さに呑み込まれた。またシナリオの前半ヒューマンから後半スリラーへ急激に過激さが増す構成も、"やばい事態となる前兆"をなめらかにツボを押さえつつ娯楽に特化させていたように思う。開幕でマギー一家がオハイオ州へ引っ越すくだりは音楽の高揚感とともに青春映画ならではの視点が拡張してくカタルシスが豊富にある。またスー・アン自身の最初は通常のオバさんだったが…から次第にフラストレーションが高まり化けの皮が剥がれる"変異"もギリ常人と異常者の境目を保っていて、どこで彼女の気が動転してやばくなっていくのか…の人物の描き込みは秀逸であろう。実はスーの過去の生い立ち(青春期)とも因果関係を絡ませるあたりも"過去と現在"を巧妙にひも付けしていてうまい。が、やはり題材の秘めた高いポテンシャルそのものとスー自体のキャラの狂気性(ひいては抑圧からの解放)の描き込みで、十分にその設定を活かせていない。周到に計画を練る段階までは良かったが。。後半でほぼ釣瓶打ちに配される殺害をくわだてるシーンも足元をすくわれた失態感が否めない。ちなみにアナザーエンディングまで観れば、よりスー自身の復讐劇を縦軸とした追い続ける執着心が際立っている。というよう"誰しもの青春のすぐそばには想像を絶する恐怖が身近にある"日常ホラーものとしてはあまりB級ぽさを出さず周到なスリラー映画であろう。
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