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はちどりのmaiのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.1
素晴らしい韓国映画。ビバ韓国映画。
と言いたくなる(というか言ってしまう)出来でした。

主人公の女の子「ウニ」は中学2年生です。
家族は険悪とは言わないまでも、家族に対する関心があるの?と言いたくなるような「無関心」に近い家族関係で、仲が悪い…に近い状態。
ウニは勉強は苦手だし、友達も多くない。彼氏はいるけど、正直形だけで好きなのかは微妙。
友達もいるけど「顔見知り以上の『本心を知る人』は何人いる?」と聞かれて答えられないウニ。

中学生の頃って、大人の期待も少しずつ感じ始めて、自分もただ受け入れて思うがままってわけにはいかない時代だと思います。
それまでは、ひどいことをされても無関心のままで対応されても「甘んじて受け止めた」ウニですが、家族でも友達でも恋人でもない、心から関心を向けれる先生に出会うことで自分と他者の間に「関心」の授受に気づき始めます。
関心を向けられることで満足していて、関心が向けられないことで不安になったりする気持ちはすごくわかるし、その関心を向ける人は他人だけど、他人に関心を向けるのも自分なのだと思えれば彼女の人生はもっと輝くんだろうなと思いました。
そして、そんな彼女に降りかかる「自分と社会」という「個人と自分」の関係性を超えた部分に彼女の成長が隠れているんだと思います。
「社会」が大きく動いた時代に「社会」との関わりをスタートする世代にいたウニ。
彼女も(他の子たちよりも確実に大きく)その影響を受けます。
好きだった先生は亡くなり、逆に姉は乗るバスが遅かったから巻き込まれず。
たった一つのことが人生にどう関わってくるかわからない、そんな不確実性の中を彼女は不完全なままで生きていくからこそ、人生の正しさ以前に良いことも悪いこともある、人生を輝かせることはできると信じられる気がします。

そして、女性の描き方の秀逸さ。
女性であるからこそ得られなかった機会と、女性だからこそ受けた虐げ。
その「甘んじて受ける」を地でいかせる社会と、それはおかしいと声を荒げ始めたウニ。
さらに、親が親がと家族の体裁を大事にしながらも、家族自身には無関心の親子。
それが常態化している社会への宣戦布告でもあるようでした。
そんな彼女、今なら40歳で母親くらいの年齢です。
これから変革の時代で、フェミニズムの時代だという現代での40歳の設定にしたのは意図的なのでしょうか…?

欧米とかで見かけるような「少女が大人になる」という成長物語としてもそうなんですけど、韓国独特の「家」の文化だったり、社会的な流れや風潮をかなり取り入れた内容で、ただの成長物語では終わらせないところが流石だなと思いました。
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