Hiroki

愛欲のセラピーのHirokiのレビュー・感想・評価

愛欲のセラピー(2019年製作の映画)
3.3
まず本日のカンヌも話題が豊富で、HBO MAXのドラマシリーズ『THE IDOL』の製作&監督のサム・レヴィンソン、製作&主演のザ・ウィークエンド、リリー=ローズ・デップ、BLACK PINKのジェニー、ハリ・ネフ、そしてそして最近公開された『レッド・ロケット』で素晴らしい演技を見せてくれたスザンナ・ソンなどなど華やかなワールドプレミア。(日本ではU-NEXTで6月配信。)
さらにカンヌプレミアで北野武6年ぶりの新作『首』が上映に。
フォトコールには北野武をはじめ『ドライブ・マイ・カー』では参加できなかった西島秀俊が初カンヌに降臨。(日本では2023秋公開予定。)
同じくカンヌプレミアで伝説と言われてるビクトル・エリセが31年ぶりの新作『Cerrar los ojos』が上映。
フォトコールに『ミツバチのささやき』以来50年ぶりのアナ・トレントの姿はあれど、ビクトル・エリセの姿はなく。やはり伝説...
コンペではアキ・カウリスマキ『FALLEN LEAVES』が上映。星取表の評価は好評もパルムドールを取るようなタイプの作品ではないとの事の意見も。審査員からの評価はいかに!

さてカンヌコンペ予習③は前半戦で非常に評価の高いジュスティーヌ・トリエ。
今作は2019のカンヌコンペ作品。
ジュスティーヌ・トリエは元々ドキュメンタリー監督で、2013にカンヌの独立部門ACIDで上映された『Age of Panic』で一躍有名に。
彼女の作風として官能的で自己中心的な人物ばかりが登場するイメージで、あまり自分との相性は良くないと思っている。
そして今作を観てもほぼ印象は変わらなかった。

内容としては、精神科医のシビル(ヴィルジニー・エフィラ)は医者を辞めて元々やりたかった作家の仕事をしようと思うなか患者として興味深い女優のマゴット(アデル・エグザルホプロス)と出会い彼女の人生に巻き込まれていく、というお話。
まー巻き込まれてというより自分から踏み込んでいくのだけど、とにかくこのシビルという主人公がヤバすぎる。
独善的で自己中心的、理性やモラルもなくて完全に歩く災害と化している。
基本的に終始、この主人公の行動原理がわからなくて共感できない。
かと言って共感させないフラットな目線で問題を炙り出すというようなショーン・ベイカー的な要素があるわけでもなく。
そしてそれ以外の登場人物も軒並みヤバいので、誰にも共感できない。
前半に出てくるシビルの友人の精神科医(アルチュール・アラリ)だけがまともな登場人物だった。

時系列をミックスさせている演出もなんの意図があるのか全く理解できずに、ただただ見づらくしているだけだったように感じた。
後半特にストロンボリ島に行くぐらいからコメディ的な要素が散見されるんだけど、それが笑っていいのか良くわからないくらい微妙なラインで困惑。
コメディにして「こんなに酷い事はもー笑うしかないじゃん!」という路線ならもっともっとわかりやすく振り切って欲しかった。
その意図がないならそれはそれで酷いシーンの連続だったけど...(たぶん彼女の作風的には意図していると思う。)

個人的には最近観た衝撃作『TAR/ター』とやりたい事は大枠で同じな気がして、その最下位互換というイメージ。
やりたい事はわかるけどジュスティーヌ・トリエの文法に当てはめるとまーこーなるよなという...
ちなみに素晴らしきTARについては今度レビューしっかり書きます。

キャストとしてヴィルジニー・エフィラ、アデル・エグザルホプロス、そして今は亡きギャスパー・ウリエルを使ってこれかよ感が強い。
無駄づかいとまでは言わないけど...

さて今回のコンペ作『Anatomy Of A Fall』は今作と同じアルチュール・アラリと共同脚本で、女性の権利や有害な男性性という現代的なテーマど真ん中を描く作品との事。
そして主演はジョナサン・グレイザー『The Zone of Interest』にも出ているサンドラ・フラー。(今作でも映画監督役で出てましたけど。)
実はこの2作品が前半では非常に評価の高いコンペ作。
サンドラ・フラーは最近欧州の有名監督から引く手あまたで非常に重要な存在へと進化している。
しかし個人的にジュスティーヌ・トリエは観るまではあまり信用できないとおもってしまう...

2023-35
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