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愛欲のセラピーのakrutmのレビュー・感想・評価

愛欲のセラピー(2019年製作の映画)
3.5
心理療法士である女性の性衝動を現在と過去を織り交ぜて描いた、ジュスティーヌ・トリエ監督のドラマ映画。心理療法士のシビルは、小説の執筆に専念するためにカウンセリングの仕事を辞めようとするが、若手女優マルゴのカウンセリングだけは続けることにする。マルゴのカウンセリングをしていくうちに、シビルは自由奔放な性生活を送っていた過去の自分を彼女に投影するようになり、さらに倫理的に許されない行為に及んでいくというストーリー。

取り上げているテーマは映画のネタとして興味深いし、主人公のシビルを演じたヴィルジニー・エフィラの演技も称賛すべき出来であると思う。全裸でのセックスシーンなど、気合いも入っている。でも、映画での見せ方が微妙で、前半でのシビルの現在と過去が目まぐるしく交錯するという構成があまり効果的に見えない。描かれている過去はかなり昔なのだが、ヴィルジニー・エフィラを特に若作りせずに撮影しているので、気を抜くと現在なのか過去なのかがわかりにくいのが難点。また、若手女優であるマルゴの苦悩が掘り下げて描けていないのが残念。望まぬ妊娠をしたとかの状況説明ばかりで、カウンセリングが必要になるほどの心情に至る経緯がよくわからないので、そこに重ねられたシビルの過去も薄っぺらく見えてしまっている。また一方で、後半は現在が主に描かれるようになるが、けっこうリアリティに欠ける展開になってしまう。映画撮影のシーンなどは、急にコメディになったかのような感じまで受けてしまう。映画監督を演じるサンドラ・フラーのぶっ飛んだ演技は、結構好きだけど。

個人的には、せっかくのアデル・エグザルコプロスの魅力があまり出ていなかったのがとても残念。役柄から仕方ない面もあるし、演技は相変わらず上手いけれど、泣いているシーンばかりなのがイマイチなのである。『アデル、ブルーは熱い色』のような演技を期待するのはもう年齢的にも無理だとしても、『愛の監獄』のようなめちゃくちゃエロい彼女をまた見てみたい。

冒頭の回転寿司のシーンやその他にも日本料理レストランも出てくるが、ジュスティーヌ・トリエ監督は日本びいきなのだろうか。
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