槇村

燃ゆる女の肖像の槇村のレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.2
いや〜凄かった…。

静かに優雅に淡々と映画は進むが、意外と退屈しなかった。

女性画家マリアンヌが、見合いの為の肖像画を依頼され、とある孤島の屋敷に招かれる。そのモデルは、屋敷の貴婦人の娘であるエロイーズ。彼女は、結婚を拒んでおり、画家の前では顔を隠す。マリアンヌは正体を隠し、エロイーズの散歩相手として彼女に接近し、彼女の姿を見て、部屋に戻ってから作画に入るという工程を試みる。そこから始まる見る/見られるというマリアンヌとエロイーズの関係。マリアンヌがエロイーズを見るように、エロイーズもまた、マリアンヌを見ていることで、2人は互いに心を通わせていくことになる。2人が心を通じ合い、肖像画は完成に近づくに従い、彼女たちには深い恋愛感情が募っていく。しかし、肖像画の完成は、2人の別れを意味する。。。

まず、この見る/見られるという関係がすごい映画的で好き。マリアンヌとエロイーズが、対象物を恐る恐る見るというぎこちなさから始まり、行動を共にし、互いが歩み寄ることで、互いの性格を知り、友情や恋の感情を芽生えさせる過程が丁寧に表現されている。見ていたはずの相手から実は見られていたという表現の機微が見事に語られている。見るという言葉の意味を考えさせられる。

また、女性たちが仕事、恋愛等々当時(18世紀の話)では一般的に許されなかった中での話と考えると非常にセンセーショナルな気がする。極力として男が出てくるシーンを排除し、女性たちの物語としているのは納得。後半男が食卓に居座っているシーンではかなり驚いた。不意に他者を目撃する感じ。

あとこの映画、肖像画をめぐる話のためなのか、映画全体が非常に絵画的。登場人物たちの表情、仕草の他、景色や建物含めてどれを取っても絵的な雰囲気。よくこんなの撮れたなぁと感心してしまう。言葉にならない。

というわけで非常にハイセンスな映画でした。内容はメッセージ性ある上、映像も非常に美しい。おフランスな上品さもありながら、エネルギッシュで、タイトルのように燃えるような2人の関係性が観ていて喜怒哀楽溢れます。静かに熱い映画です。
槇村

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