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燃ゆる女の肖像のperimckのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.3
音楽がほとんど使われていないので、波の音や生活音が際立つし、最後のシーンに使われた音楽は、これまで静かだっただけに次々と押し寄せる音に圧倒され、一気に感情が高ぶりました。選曲も最高です。すごいラスト!

画家とそのモデル。
見ている方だと思っていたら、相手からも同じように見られていた。
二人の視線が、毎回いろんな感情を表していてとても印象的でした。

別れの時、エロイーズが「振り返って」と言ったシーン。そしてその時の姿。
オルフェの神話では、振り返ってはいけなかったのに。振り返らせたエロイーズの心情を思うと辛いですね。

一方で最後のシーンでは、エロイーズはマリアンヌを見なかった。
おそらく、そこにいるのを知っていたのに、強い意思を持って見なかったのだと思うけど、違うかな。。
かつてマリアンヌがエロイーズに弾いてみせた曲を聴きながら、エロイーズは何を思っていたのだろう。
時折微笑んでるようにも見えたのは、見なかったマリアンヌに向けてのものだったのか、思い出に対してのものだったのか。。
マリアンヌはそんなエロイーズからきっと目を離せなかったに違いない。
マリアンヌも泣いていたのだろうか、と映画を見終わってからずっと考えてしまいます。

母親不在の間、ソフィーと三人で過ごす様子が、立場の違いを越えてみんな平等でとても素敵でした。
最初の頃は固い表情だったのに、親しくなるにつれて柔らかく美しく変わっていって、特に狭い世界で生きてきたエロイーズの変化が凄かったです。

電気のない生活はもちろん大変だけど、ろうそくを持って歩いたり、さくらんぼの種で身体を温めたり、暖炉の音や揺れるろうそくの灯りにも趣があって、どのシーンも美しかったです。
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