Chico

燃ゆる女の肖像のChicoのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.5
久々にこんな才能に出会った。この上なく繊細な表現。こんな表現が観たかったんだ、と心が満たされました。そして監督の感性に惚れました。

18世紀の女性芸術家を主人公にしてジェンダーを切り口にして語られる社会的、文化的なメッセージもさることながら、私は人が人を見つめるという行為にとても力強い愛と生を感じた。

好きな人の輪郭をなぞるってめちゃくちゃ官能的な行為だと思うのですが、製作中のエロイーズを見るマリアンヌの目は禁欲的で、それが凛としていてすごく美しい。

ワンショットで撮られたという夜の焚き火シーン。あの合唱を聞いた時は鳥肌が立った。そしてそこからの流れるようなカットの切り替えに感嘆した。

挿入されたオルフェウス(オルペウス)とエウデュリケーの神話も二人の関係性により深い意味を与えていました。

タイトル、燃ゆる女の肖像とは言い得て妙。内側に燃え上がる炎のような、つかめないでゆれる消えそうな感情が丁寧に描かれていて、彼女達の折り重なる時間や愛の軌跡が(まさに肖像画を描く様に)形作られていく様を見事に映像化していました。

🍒本作クィアパルム賞受賞。セリーヌ・シアマ監督の次回作が楽しみ。
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