鳥さんの瞼

燃ゆる女の肖像の鳥さんの瞼のレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.9
なんて完成度が高い!
美しさ、緻密さ、力強さ。


題名に恥じない見事な画面。
まさに絵画が動いているよう。整頓された色、青っぽく潤んだ影。

音も美しい。
息遣いや衣擦れなど些細な音が丁寧に扱われている。リッチな音響。
音楽は印象的な二曲のみ。


見る、見られるの物語。
少ない台詞で静かに親しさが重なっていく。

表情の機敏!
エロイーズさんとマリアンヌさんの眼差しの温度。
エロイーズさんが徐々に柔らかくなって可愛かったな……
字幕の訳がずっと敬語なのも素敵。

後半からの加速が良い。
性に関し直截的な部分があるが、
ポルノとして消費されないよう注意深く描かれている印象でした。
親密さの柔らかい部分だけ掬い取っているようで好きです。


女三人の理想郷、最高でした。

ソフィさんもいいキャラクター。
三人で草原に出かけるシーンが印象的。
生理や堕胎について淡々と描いているのも良かった。 

外側に男性の気配をさせながらも平和で優しくて楽しくて。
終わりに一瞬うつる男性の異物感に驚き。


個人的に堕胎を絵に描くシーンには、理解が至らず。
落穂拾い的な(やや違うが)画題にしても、
ソフィさんの意志は尊重されているのか?身分差あるしな……と気になり出し、結局解決出来なかった。
(描こうとなる気持ちは想像できるのですが)
詳しい方どうか教えてください。


そして結末までの美しい流れ。
オルフェウスの話が印象的。
しかしオルフェウスで終わらせないのが絶妙。
痛切さのある、
それでいて観る人に委ねる幅を持つ、いいラストでした。


好みは別れるかもしれませんが、ここまで完成度が高いのならば誰でも観て損がないのではと思えます。
美しい作品でした。




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女性画家というと、時代も国も違いますがアルテミジアジェンティレスキを連想しました。
女性であることや強姦事件訴訟などもそうなのですが、
作品「悔悛のマグダラのマリア」のドキッとするエロチックで作中と結びつく部分があったのでした。
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