鹿shika

燃ゆる女の肖像の鹿shikaのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.3
1770年18世紀フランス、ブルターニュの孤島。望まぬ結婚を控える貴族の娘エロイーズの肖像を描くために上陸した女性画家マリアンヌとの2人の淡い5日間。

伯爵夫人が用事のために本土に出掛けることとなり、使用人のソフィーと、エロイーズとマリアンヌの3人が残る。
3人は身分の格差を超え、海に出かけたり、ギリシャ神話に言及したりと、友情を深めていくが、エロイーズとマリアンヌは友情を超え、熱い愛を育むこととなった。

これまでにLGBTQの映画作品をたくさん見てきたが、それらは爽やかで綺麗に描かれることが多い。
今作はそれが、より綺麗に繊細に描かれていた。
色々な賞を取っていたので、期待が高かったのだが、それを遥かに超えるほどのものだった。

まず18世紀のフランスが舞台ということで、文学的な部分が多く見られた。
小説の引用を会話の中に用いたり、ギリシャ神話について語り合ったりと、、
2人が愛を囁き合う場面の言葉たちが、息をのむほど美しく、
こんな風に愛を語れるとこに、どこか羨ましさも感じる。
日本人には到底いくことのできない領域を見た。
特に好きだった場面を以下に抜粋させてもらう。

”髪を上げ 耳の軟骨の形を観察すべきだ。
温かい色合い 透明感、中央の穴は力強い。
その肌色は昼でも 頬に比べ、控えめだ。”

新しい感情が、
ーー何です?
後悔です。悔やむより、思い出して。あなたが台所で居眠りする姿。
ーー私は、カードで負けた時の不機嫌な目つきを
あなたの初めての笑顔
ーーお互い仏頂面でした
時間を無駄にしました。
ーー私も同じです。キスしたいと初めて思った時のこと、、あなたは?
「経験は?」と聞かれた時。きっと、断らないと思いました。
ーー覚えています。

この2場面の美しさたるや。あまり美しすぎて、酔ってしまいそうになる。
ここまで、表現できるのがフランス映画の特徴だと思うが、
重くもなく、オルゴールを聴いているような繊細な美しさを出せたのは、
監督のこだわりなんだろう。
休みの前日の夜更かしのお供として、もう一度ゆっくり味わいたいな!

そしてタイトルの[肖]の文字が逆なのが本当にオシャレ。
外見の外面と、肖像に表現することのできる内面の表裏一体を表しているのかしら。

長々と語ってしまい失礼いたしました。
好きなんですよ。
鹿shika

鹿shika