このレビューはネタバレを含みます
絶対好みの作品だから、落ち着いて観られる時までとっておこうと後回しにしていたら、結局ネトフリ配信終了間際、駆け込みで観ることになった。
「燃ゆる女の肖像」
このタイトルからして素敵。ポスターもとっても素敵。
肖像画を依頼された画家と、結婚のため肖像画に描かれる娘。観察する側、される側としてはじまった2人。「肖像画を描く」という行為の中に、相手を見つめたり、見抜いたり、想像したり、決めつけたり。が含まれていて。結果として完成した作品はその人の美貌や性格や権威を周囲に知らせるだけでなく、2人の世界を世界に知らしめる側面もあって、「描く」行為について深く考えさせられた。何重にも神聖さを感じた。
静かで言葉も少ない映画、2人の視線にフォーカスするカットが見事。瞳は雄弁。炎や波の描写は美しく、喧騒から離れた島、大きな自然の中でひっそりと、でもうねるように燃ゆる愛だった。
ラストにかけて、作中登場する神話のオルフェと妻のエピソードに、マリアンヌとエロイーズが重ねられていたのも印象的。
赤ちゃんの隣での堕胎も忘れられない。当時の社会ではそのようなことは大きな罪だったろうし、母体に危険も伴うし、でも、そこに感情論持ち込まず、1人の女の選択として淡々と描かれていた。そしてそれを「描く」という場面も。生と死は隣り合わせ。
私にはこの映画を語る言葉が少なすぎる。また観たい。