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燃ゆる女の肖像のmatchypotterのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.0
今年は欧州の映画も積極的に、と思っていて、少し前から気になってたやつ。

2019年、第72回カンヌ映画祭で脚本賞を獲ってる。
思いのほかレビューの件数が多く、評点も高い。これは観るしかない、まさにFilmarksの皆様にオススメされた形。

女性同士の恋の物語だった。
まったく前情報なしで観たので衝撃もあったが、なんというかものすごく綺麗というか。

孤島の自然を活用した素敵なロケーション。
古くて歴史も感じるけど確かな存在感を解き放つ屋敷の雰囲気。

風の音、波の音、足音、息づかい、屋敷が軋む音、筆を走らせる音、暖炉の火のパチパチ音。

孤島で物静かに暮らす人たちが耳にしている音や、景色。
絵の具の匂いまでこちらに漂ってきそうな静かな没入感みたいなモノを感じた。

孤島で静かに絵を描きたい主人公。
そこに現れる貴婦人。娘がなかなか結婚しないからとお見合いのために彼女の肖像画を描いてくれと頼みにくる。

それを受けて描きあげるが、娘は納得せず描き直し、、、としているうちに、2人に芽生える感情。

貴婦人と娘家族には過去に悲しい出来事があり、彼女たちの心に暗い影を落としている。

そんなこともあって一筋縄ではいかないこの“肖像画”が、“燃ゆる女の肖像”となっていく。

この2人の女性のやり取り。
淡々としているような、何か2人でお互いの空いてる穴を埋め合ってるような。
そんなことができる相手と理解していくような。

しかし、肖像画を描くことで芽生えた2人の関係性は肖像画の完成が終わりを意味することになる。

娘エロイーズが、主人公の画家マリアンヌが描いた肖像を認めず、描き直しとなるが、そこからエロイーズ本人がモデルになることを申し出る。

お互いに今までの人生で起き得なかった感情の変化のようなモノをお互いから感じ取り、意外性から必然のように受け入れていく流れ。

静かだが、確かにある感情が少しずつ顕在化していく。
一方は貴婦人の娘、一方は画家。
まったく生き方の違う2人が“肖像画”によって引き合う。

まさに絵画のように繊細な筆の動きの積み重ねで大胆さが生まれるような。

あの“唄”と“燃える”シーン、あそこでスイッチが入るわけだが、何とも形容し難い不思議な雰囲気が漂った瞬間だった。

実はこれを観た前の日に『パスト ライブス』を観ているのだが、どちらにしても普段はあまり観ないジャンル。

だからこそ新鮮で、普段は味わえない衝撃と共感みたいなモノを感じれた。たまにはこういうのも良いね、、、必ずしもハッピーとは言い切れないけども。

途中で出てくる赤ちゃん、めちゃくちゃ可愛い。
登場してるシーンはなかなかアレだけど。

“肖像画”が彼女たちを繋ぎ、“肖像画”が彼女たちを引き剥がす。
“肖像画”と共に始まり、終わる。でも、絵は残り、その時の記憶も残る。

まるで絵画のような関係を紡ぎ出した作品。
フランス語はわからないが、2人がどんな関係であっても字幕が常に敬語でやりとりしてるのも良かった。

ラストシーンもすごく印象的。

※24年3月、映画オススメブログ、始めました。
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『matchypotterと映画の秘宝』
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作品単発のレビューはここでやっているので、こちらは企画記事メインに挑戦したいと思います。
皆さん、時間がある時にでも見に来てください。
(まだ始めたばかりでお粗末が過ぎるブログですが)
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