明らかにロメールを参考にしたバカンス映画。禁欲的なショットの積み重ねによる堅実な演出が施されてはいる。しかし、主人公に大病を背負わせるというドラマへの欲望を捨てきれていない時点でロメールのような通俗性に徹底的に背を向けた頑固さには及ばない。かと言ってギヨームブラックのようなエモさに振り切る勇気もミアハンセンラヴのようなバサバサカットを割るドライな編集も見当たらない。どこか古典的なフランス映画のコスプレに終わってしまっている。群像劇として見ても脚本の練りは甘い(というか人物が同じ場所に最後に集まるだけで群像劇としては機能していない)。しかし、今のどこにも旅行に行けない状況においてポルトガルの夏の風をフィルム越しに運んでくれた事の価値は十二分にあるとは思う。