たく

名もなき生涯のたくのレビュー・感想・評価

名もなき生涯(2019年製作の映画)
3.6
ちょっと苦手意識のあるテレンス・マリック監督の最新作。
「ツリー・オブ・ライフ」と同じく断片的な映像を繋げていく作りになってるけど、実話が基になってるせいか難解さは感じなかったね。

第二次大戦中にナチスへの忠誠を拒否し続けたオーストリアの一農夫の話で、己の信念を貫き通すのが「ハクソー・リッジ」や「ハンガー」と重なる。夫婦仲が異常なまでに良いのはちょっと引いた。
フランツが戦地に赴くシーンで「マタイ受難曲」第一曲が流れるのは、彼をキリストに重ねて描いてるのかなと思った。
彼の信念が原因で奥さんが村八分になる展開が怖いんだけど、最後まで夫を信じ抜くところに夫婦の運命的な絆を感じた。

登場人物が英語喋ったりドイツ語喋ったりするのが「ジョジョ・ラビット」と同じ中馬半端さを感じさせて、特に裁判シーンは不自然だったね。ここでかつてヒトラーを演じたブルーノ・ガンツが登場するのがなんとも感慨深い。

低い位置から遠近感を強調した手持ちカメラが独特で、場面によって映像酔いしそうになった。時々映し出される風景シーンの美しさはさすがテレンス・マリックで、自然は人間が起こす愚かな戦争とは全く関係なく存在してるってことを象徴してたね。
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