いずみ

家族を想うときのいずみのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.4
2017年に『わたしは、ダニエルブレイク』を見たときの衝撃は忘れられないが、今作の衝撃はそれを余裕で上回った。
2019年末で年間ベストを考えていた最中とんでもない傑作を年末に放り込んできた御年83歳ケン・ローチ。

家庭の貧困と新たな労働形態。
汗水垂らしてどころではない、小便を尿瓶にせざるを得ないくらいに過酷な労働を強いられる父。
訪問介護で糞尿を浴びながらも唯一の心の支えである家庭を守るために働く母。
心の底では愛している家族に反抗し、貧困と思春期の鬱憤を街中にグラフィティを描くことで晴らす息子。
そんな破綻寸前の家庭を必死に繋ぎとめようと声を荒げる娘。
低賃金長時間労働の夫婦に心の余裕なんてない。
彼らを抱きしめてくれる人は誰もいないのか。この世界では貧困もなんでも自己責任だ。社会は手を差し伸べてくれない。
この映画を見た人、この現状を知った人だけが彼らのことを思うことができる。心の中で抱きしめることができる。
『Sorry We Missed You』
オールタイムベスト級の一本だった。
いずみ

いずみ