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その手に触れるまでのmのレビュー・感想・評価

その手に触れるまで(2019年製作の映画)
4.8
クライマックスで起きると思っていた事が割と前半で起こる。ダルデンヌ兄弟はそれが起きるかどうかよりも、一線を超えてしまった彼のその後をこそじっくり見つめて寄り添う。

頑なだった少年の心が解ける契機が母の涙なんてちょっとシンプルすぎるかなと思ったらもちろんそんなに簡単にいく訳はなくて、宗教とインターネットという新旧の厄介なものによって歪んで固まってしまった人の思考の危険さと変わる事の困難さを映画は丹念に描いていく。普通の映画ならここで彼の心は変わるだろうというドラマチックなイベントも、現実的なリアリズムの前ではあっさり敗北して彼は変わらずに通過していく。

「その手に触れるまで」という邦題の意味が明らかになる展開には衝撃を受けて思わず悲鳴を上げてしまった。あまりに哀しく虚しく痛烈なラストを迎える少年の姿にこめられた、ダルデンヌ兄弟から現代人への問いかけの重さに怯む。
1件
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    これイスラム教だけの問題を描いているという訳ではなくて、インターネットによって拡げられていく無知ゆえの憎悪という意味ではネトウヨとかレイシストとかにいくらでも置換できるのがポイントだと思う。つまりネットによって分断され煽られていく憎悪と分断の時代を、我々がどう生きればいいのかという極めて普遍的な話。この主人公はあなたの友人や親かもしれないし、なんならあなた自身かもしれない。

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2016年1月頭から観た順に登録していってます。点数は結構ノリで決めてます(段々点数が甘くなってきてます)。たまに文章に私事が入ります。 ベストムービーは2024年のベスト10です。 2024年は…

2016年1月頭から観た順に登録していってます。点数は結構ノリで決めてます(段々点数が甘くなってきてます)。たまに文章に私事が入ります。 ベストムービーは2024年のベスト10です。 2024年は十数年に一度の映画の当たり年でしたね。ベスト10に入れたかったけど泣く泣く次点に漏れたのが「ソウルの春」(この映画は歴史に最高の影響を与えたな)、「アメリカン・フィクション」「アイズ・オン・ユー」「Here」「パスト ライブス/再会」「Chime」「ナミビアの砂漠」です