漫画家の平野耕太先生が話題にしていたので気になって鑑賞。
この陰鬱な雰囲気、観た後に希望が持てなくなる精神的不衛生感、個人的には大好き。
登場人物のロベルタが劇中で言っているように、この世界のものごとには特に意味はない。
人間は死んでしまえば何も残らない。
文明だって滅んでしまえば意味がない。
みんなそれが分かってしまっているから、自殺、宗教、性の解放に逃げる。
中盤に出てくる槍のような物質は、物語的には意味のない存在だった。
でも希望のなくなった人たちは、そんな意味のない物にも意味を見出そうとする。
その行動こそが人間性であり、「前に進もうとする意思」である。
宇宙という広大な空間と時間を持つ存在からしたら、人間の活動など「静止しているのと同じ」くらいにちっぽけなものではあるが、確かに「前に進んでいる」のである。
事実、乗客が死に絶えた後もアニアーラ号は宇宙を「進み続け」、598万年後に、青い星へと再生した地球へと帰ってきた。
エンターテイメント性に乏しく、カルト教団の乱行シーンなどもあるため万人には進められないが、含蓄もあるし、観た後に心に爪痕を残す素晴らしい作品だった。