2018年、スウェーデン/デンマーク製作の近未来スペースSF映画。
放射能汚染が蔓延する地球から火星へと移住するため、8000人もの乗客を乗せて旅立った巨大宇宙船アニアーラ号。だが不慮の事故で軌道を外れ、大宇宙の彼方へと永遠に彷徨うことに。修復不能なまま1年、3年と時が流れ、希望を失って狂いそうになる乗客たちは、MIMA(ミーマ)と呼ばれるカウンセリングAIに依存するようになる。しかし、あまりにも多くの感情を受け止めたMIMAはある日、機能を止めてしまう。漂流から5年後、救助船と思しき物体がアニアーラ号に接近。だがそれは船ではなく、未知の物質で作られた〝巨大な槍〟状の物体だった……
原作者のハリー・マーティンソンは、1974年ノーベル文学賞を受賞したスウェーデンの詩人(ちなみに監督のペラ・コーゲルマンは現在42歳のスウェーデン人女性)。邦訳もある原作小説は未読だが、たしかに「文学趣味」的なフレーバーが散りばめられていることは、たしか。
とくに(途中まで、乗客のセラピーを果たしていた)MIMAのインターフェイスの(抽象絵画のような)アブストラクトな佇まいとシニカルな応答から、レム原作の『惑星ソラリス』やアーサ・C・クラーク原作の『2001年宇宙の旅』に出てくるHALを思い出す人もいるだろう。
凡百のハリウッドSFであれば「危機を回避した宇宙船は、無事移住を完了するのだった」となるのだろうけど、北欧産鬱SFを舐めてはいけない……と、これ以上はネタバレになるな!
(8000人もの乗客を乗せた)アニアーラ号の佇まいも見どころのひとつではあるが、なんだか「世界一周豪華客船」みたいな館内サーヴィスの数々を見ると「そんなに燃料使っていいの?」とツッコミたくなることも事実。まあ、でも、そこが貧相だと、映画として華がないからね!
タルコフスキーの『惑星ソラリス』やキューブリックの『2001年〜』みたいな歴史的名作と比較すると、かなり分が悪いが、それなりに「鬱な宇宙旅行に浸りたい」気分には応えてくれる。