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エターナルズのTenKasSのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
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尺が2時間30分以上もあるブロックバスタームービーに「長い」と文句を垂れる権利は、5時間を超えるドキュメンタリー映画を平気で観に行く自分にはないのかもしれない。しかしその「長さ」と「クロエ・ジャオ」「MCU」という固有名詞の掛け合わせに対して期待する権利はあると思う。だが、それはいらぬ期待だったという他ない。
もっと前衛的なヒーロー映画をその尺が意味するのであればその期待は応えられたと言っていいが、この2時間半は単に面倒な物語的ツイストをこなすことと、多くの登場人物を掘り下げるために使用されているに過ぎなかった。
ファーストカット、もしかしたら『ツリーオブライフ』的なコードの映画が始まるのではないかという期待は「いつもの」ヒーロームービー的コード(即ちディズニーの方程式)に回収されていく。それはラミン・ジャワディのエターナルズのテーマが神秘的なトーンから始まってありがちなブロックバスターのテーマ曲的なトーンに移り変わっていくことにも表れているようにも思う。
たしかに記号の単位においては作家性とされるものや、外しは存在する。
パブリックイメージと異なるアンジェリーナ・ジョリーの配役なんかがそうで、あの人物造形はアンジェリーナ・ジョリーに近しい人には自然に映るらしい。相変わらず何も知らないジョン・スノウやそのまんまなマドンソクの活かし方も役者を素材として活かしている。だから少なからず作家性は存在している。またテレンス・マリック的なロケーションや画面の暗さ、焚き火、カウボーイ、自然に関する言説は記号的な意味での作家性と言ってもいいと思う。
ただ全てはディズニーのコードに収斂していくのみなのが非常にもどかしい。突き抜けることがない。かといってそのディズニーのコードが圧倒的につまらないからというとそういうことでもない。とても楽しく観た。
しかしやはり、この監督を連れてきて…このオーソドックスさか…というもどかしさ、そこに尽きる。
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