ブラックユーモアホフマン

エターナルズのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
4.5
なぜRottenTomatoesが腐ってるのか全く意味が分からない。大傑作!とも思わないけど普通に超面白かった。

まずキャスティングの勝利。誰をどの役に配役するかという狙いや、メンバー構成のバランスなどがバッチリ。
アンジェリーナ・ジョリーのような言わずと知れたハリウッドスターを主役ではなくどちらかというと脇のキャラに配役したり、そしてアンジーと比べればまだ世界的認知度はそこまでではないであろうマ・ドンソクとペアにするというアイデアも面白いし、『聖なる鹿殺し』とかではあの独特な顔が不穏に見えたバリー・コーガンが神様的な役にはなるほどこうハマるのかという発見があったり。

なによりクロエ・ジャオが監督ということで事実上の主人公がアジア系の女性だったのが、とても良かった。
シャン・チーといい、アジア系ヒーローの存在感がどんどん増えてきているフェーズ4、いいですね。

フェーズ4、Disney +のドラマの方はどれも”セラピーもの”(キャラクターを深掘りする=心の傷、トラウマと向き合い克服する物語)だけど、映画の方はなぜか”家族の再集結(Reunion)もの”が続いてる。『ブラック・ウィドウ』も『シャン・チー』も、本作も。

現在と過去(それも千年単位のめちゃくちゃ過去)の時制を行ったり来たりするストーリーテリングも面白かった。つまり彼らはこういう時間感覚で生きているのだということで。それを実感を持って一般市民の我々も理解できる映画の語り方。

『ワンダーウーマン』シリーズとかもそうなのだけど、人類って本当に失敗ばっかでそこから大して学びもしないしバカでどうしようもないから冷静に考えたら滅びちゃった方がいいよな、”でもさ”っていう話に弱い。

でもさ、それぞれの生活の小さな幸せとか、それぞれに愛する人や大切な人がいて、それが地球規模で考えたらとてつもない数の小さな物語として存在して、って考えるとやっぱり滅びるべきではないね、そうじゃない方法で世界をより良い場所にしていくことを考えていこうぜ、っていう。

実はこういうことを人間サイズで描かれてもあまり納得させられないんだけど、神様級のスケールのデカい話で描かれると説得されてしまうもので。エンドゲームもそうだけど。そこがブロックバスター映画の良いところだと思う。

しかしこの映画の一番のキモとなるキャラクターは、カルーンだと思う。クメイル・ナンジアニ演じるキンゴがボリウッドから連れてきたマネージャーのおじさん。
神々が揃って「地球どうする?」って話をしてる時に、アイツがいたことが滅茶苦茶大事だったと思う。
思いがけず人類代表みたいになってしまった人が、太ったおじさんっていうのもすごくいい。高潔な意思を持った美少年とかじゃなくて。そこにもこの映画の描く物語の美しさが表れていると思う。 

クロエ・ジャオが作るブロックバスター映画もまだ幾つか観たいけど、でも『ザ・ライダー』や『ノマドランド』みたいなのも観たいので、両方並行してやってくれないかな。

【一番好きなシーン】
・解散式の時、バリー・コーガン(=ドルイグ)が遂に我慢できなくなるところ。
・ブライアン・タイリー・ヘンリー(=ファストス)関係の全シーン。
・ジェンマ・チャン(=セルシ)の新たな力が発見されるシーンと、飛んできた溶岩を小鳥に変えるところ。