ウスバカゲソウ

エターナルズのウスバカゲソウのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
3.5
MCU最大の野心作。
クロエ・ジャオの詩情溢れるクロニクルとアニオタ成分が凝縮された渾身の一作なのは間違いない。
その作家性と歪さはDCEUぽくもあり...

宇宙からの高次元存在が地球の生命誕生に干渉という『プロメテウス』感。
既存のMCUの世界観からは飛び抜けている。
描かれる多様性、革新性は多くの人が語るところ。
この座組でしか叶わなかったことを喜ぶべきか、悲しむべきか(MCUブランドへの信頼がないと難しいのは事実だろう)
不完全かも知れないが、突破口は開けた。

イカリスが某ドラマのアイツに見えてしまうのは功罪。
憎まれ役で不器用なやつだが、その末路には泣ける。
創作された神話が結実する。
誰が書いた叙事詩なのか。
多くを語らずのドラマが上手い。
アクション場面は良いところと微妙なところが混在。
ジャングル戦良かったのに暗い!
多様な能力の描き分けは流石。
戦闘向きではない技術職がメインメンバーとして戦うのもアツい。
なんなら大活躍。
ほぼ魔法なのでちょっとストレンジぽいが。
魅力的なキャラクターがたくさん出る嬉しさ。
しかしながら、長くて鈍重でもある。
全体の構成の歪さは否定しようがない。
あまりに繰り返しが多すぎる。
ドラマシリーズのダイジェストのような進行。

エターナルズとディヴィアンツの関係性。
ディヴィアンツの既視感、ウルトロン感は置いといて。
進化したために被創造物であることに気がついてしまう悲劇。
寵愛を受け転生を繰り返す物と、ただ殺し殺される物。
一作目はあくまでエターナルズの歴史とディヴィアンツとの決着までにして欲しかった。
MCUのヴィラン蔑ろ問題。

人間ドラマの多様さ、濃密さ。
自然の捉え方、美しさ。
それらをハイバジェットの大作で成立させようとする気概。
新しい才能へのMCU側の絶対的信頼。
歪さや微妙な点も確かにあったが、新しい歴史の幕開けに立ち会えたのは良かった。