な

朝が来るのなのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
5.0
特別養子縁組は子の利益のための制度。もっともっと広めなきゃならない。

井浦新と永作博美の夫婦役が本当に自然で素敵すぎた。旅行に行って、セルカ棒で引きの写真を撮る時に佐都子が手を握るんだけど、それに気づいた清和が、「手は映らないよ?」と笑って、佐都子が「いいの」というやり取りがある。
お洒落なお店でデートしながら、昔の思い出を話したり、子どもができたらね、と話すふたりがすごく柔らかい雰囲気を纏っていて、大大大好き。

夫婦とひかりの物語は現在と回想をいったりきたりする。ひかりパートがやってきた時、これから起こる出来事を考えてつらくてつらくてたまらなかった。ミサンガをずっとつけているひかり。親に「お腹の子がいなければいいとどれだけ思ったか」と言われ、親戚に「アホな目にあったなあ」と笑いながら言われるひかり。原作ではお姉ちゃんが、「今のはおじさんが悪いよ!」と声を上げてくれ、家を出た後はバイト先まで会いに来てくれるのだけれど、映画ではそこが描かれていない。光に手を差し伸べてくれる浅見のような人があとひとり、ふたりいたら、変わっていた何かがあるのかもしれない。
間に合わなかったかもしれないけど、手を差し伸べたそのひとりは佐都子でもあるし、「広島のお母ちゃんである昔の自分」でもある。手繰り寄せて掬いとってくれた佐都子は強くて、逞しい。広島のお母ちゃんとして、あの自分はこの人たちの中で生きていると知ったひかりはどんな気持ちだっただろう。
『あなたが出来ないことを、子どもを、私は産んだから』と言うひかり。どんな気持ちだったのかなあ。友達のブルゾンを着て、何とかしようという思いで家にやってきた。どんな気持ちだったのか。

ドキュメンタリーのような、やっぱり物語のような、好き嫌いが別れると思うけれど、私は大好きです。
エンドロールまできちんと見るべき。アサトヒカリも良かった。
な