Hiro

朝が来るのHiroのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
4.7
「朝が来る」
溜息が出るほど美しく悠然な自然風景と、どこまでも厳しい社会と、その中でもがきながら生きようとする人々の姿が、本当に美しくて、綺麗で、何度も涙を流してしまいました。

「家族」を描いた作品は数多くあるけれど、今作はその中でも特に「母親」に焦点を当てた作品。養子縁組をする夫婦と、若くして母親になってしまった少女。二人の過去を描きながら物語は進んでいく。

ひかりの周りに、本当に彼女のことを考え、心から接してくれる人が1人でも居たなら。それが家族であったなら。どんなに良かっただろう。彼女が若くして子供を授かったことは、責められるべきことなのかもしれない。若さ故に命を宿してしまう。その事が引き起こす重大さもわからないまま。だけど、ただ「若い」というだけで命を宿す事が罪となるならば、私達は何が「正解」だと思っているのだろう。

女性である私でも妊娠した事がないから、「命を宿す」ということの重みが、自分にどれだけの影響を与えるのかを理解することは不可能でしょう。そしてその命を他人に託す。それは想像を絶するほど、身を切られるような想いではないのか。

愛する人と結ばれて子供が出来てしまったひかりと、愛する人と居ながらも子供が出来ないさとこ。誰かからの「愛情」を求める少女と、愛情を与える誰かが欲しいと願う女性。対照的なようでいて、実はとても近い存在なのかもしれません。

何より俳優陣が素晴らしすぎました。最早演技ということを忘れてしまうほど。その中でも飛び抜けて素晴らしかったのは、蒔田彩珠さん。「おかえりモネ」での演技で既に気になっていた俳優さんでしたが、予想を遥かに超えて素晴らしすぎました。
どこか不思議な空気を纏う少女と、荒んでしまった少女。同じ人物とは思えぬ程、表情が全く違くて。しかもまだ19歳。これからどんどん化けていくだろうなぁと思います。

ひかりが幸せになるかどうか、それはエンドロールの朝斗の台詞が全てだと思います。最後にあんな台詞入れてくるなんて、やっぱり河瀬監督は凄い。
Hiro

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