ひらが

朝が来るのひらがのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
3.9
子宝に恵まれず特別養子縁組制度を利用する夫婦とやむを得ない事情で養子に出すことになる産みの親。2つの視点で構成されたドキュメンタリー調に仕立ててある。というかドキュメントそのものとして切り取ってあるシーンが幾つか存在する。

冒頭で親としては非常に悩ましく判断の難しい問題に直面し、これをテーマに2時間話が進むのかと頭を抱えながら鑑賞に入った。
が、この双方が養子縁組という選択に至るまでの過程と抱えている問題にまで踏み込んだ内容がその先に待っており...
そう、ここからはバックグラウンドについて克明に記録された内容への転換。

ティザービジュアルから夫婦視点をメインに撮られた作品かと思っていたのだがそうではなく、薪田彩珠演じる産みの親側に重心が置かれている。
一つの変化から大きく人生が変わり何をしても光の差さない暗闇を歩いている様な状況が重く辛く続いていく。

河瀬直美監督らしい作品であり、多くの人が社会の中に蔓延る問題に目を向け考えるキッカケになる良作だろう。
役積みをさせる徹底ぶりもこの監督の個性であり特徴で、時系列を巧みに操作して細かいところまで演出を考えているんだと思う。
個人的にだが全体の構成を通して観てみるとやや心が疲弊気味になる。映画としては削ぎ落としてよりシャープに見せることも可能かもしれない。単にこの監督の特殊性に付いていけるかの問題かもしれないが。
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