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Daughtersのclaireのレビュー・感想・評価

Daughters(2020年製作の映画)
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去年これをアップリンクで見ていたら本当にトラウマ的に邦画を劇場で見ることを辞めてしまっていたと思うから、数日後に始まる「euphoria S2」配信までの暇つぶしで見る去年未見の邦画リストとして消費するくらいで丁度よかった。

結果的に「猿楽町で会いましょう」を見て、よっぽどのことがない限り劇場で邦画は見ないようにしようと思うに至ったのだけど、「猿楽町〜」はまだ娯楽映画として楽しめたけど、これに関しては、どのようにしてこの作品の企画が通って現実的に流通したのかが個人的に気になる。誰か反対しなかったのか?映像的にある程度それっぽさは演出できるけど(監督はインタビューでウォン・カーウェイとかミシェル・ゴンドリーとか挙げてて???だったけど、沖縄でいきなり「(安っぽい)テレンス・マリック来たー!!」って爆上がりした)、結局すべて「コマーシャル」でしかない。普通に考えて宣伝文で「ひとりの妊娠によって訪れる、ふたりの人生の変化を『一方』の目線から描くヒューマンドラマ。」ってあるけど、その”一方”とはつまり広告業界内におけるマジョリティ側であると同時にそれが流通する社会における「マジョリティ」=「男性」であり、広告上がりの監督がどっぷり浸かった業界=社会をそのまま反映させていてかなりしんどい作品でもある。

監督がインタヴュー(ちゃんと読んだ)で「2020年の空気感」だとか「現代性」とか「ここ2・3年のフェミニズムの風潮」とか語っていたけど、まさに外側だけその要素を取り入れれば中身は問われないのであって、さすが日本(アメリカもどこも同じだけど)という感じだ。ファッションかよ。SDGsかよ。あれ、よく見たら胸にレインボーのバッチ付けてるじゃないですか!!すげえな。インタヴュイーも「作品全体で目線がフラットだと感じた」と言っているけど、まじで?レインボーのバッジつけてるからって、貧困とか気候変動とかジェンダーについてこの人はちゃんと考えてるんだって相手を鵜呑みにしないよね?まさか、その人が女性二人を中心に映しているからって、それだけで進歩的だ!!ってなりませんよね?すげえ世界だ。

その代わりに当然こう聞かずにはいられない。つまり、「その物語における男の不在は単なる無責任ではないのか?」「その女性二人が終始明らかに肌の露出が多いのはなぜ?」。或いは、「そのバッジはAmazonの翌日配達で買ったんですか?」と(この質問についてはほとんどが「会社から支給されたから付けているんだ」とバカみたいに答えるだろう)。撮る側/撮られる側=見る/見られるの権力関係をそのまま男性/女性に回収させない、或いはそれを脱構築的に描くのが2010年代後半の物語の傾向で、そのある意味でのコレクトネスが蔓延していることにうんざりしていたのだけど、ありきたりの一周目の批判をまだ問題にしなきゃいけないのかと。それが日本の「クリエイティブ」の現状ですよ。まあ広告だから多くの人に見てもらうためには、そんな具体的な問題がどうとかどうだっていいんですよ。むしろ、そこに突っ込んだところでそれをきちんと考える能力もないし誰もそこに興味を持たないと思ってる。それで実際に、その「現代的」な作品をほとんどの主要ファッション誌が後押しするわけ(それが媒体-広告主の権力関係によるものなのか、編集者が推したいと思ったから推したのかが気になる所だけど、恐らく前者だとは思うけど、両方だな。いずれにせよクズ)。作り手もメディアも受け手を舐めてる。だったら大根仁とか福田雄一みたいに馬鹿みたいに馬鹿みたいな映画を作った方がまだまし(見たことないし見ないけど)。資本を回収するために客寄せしなければならないなら、最初からこんな映画作らないほうが倫理的。善人面してこんだけ対象(観客、俳優、女性)を搾取するだけなら、日本映画業界(「日本映画」ではなく)はとっとと滅んだほうがいい。日本の「広告界隈」の人間が映画を作るのをそろそろ禁止にしよう。日本の「クリエイティブ」と言われる業界が如何に非倫理的で腐っているか改めてよくわかった。
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