Kenta

カセットテープ・ダイアリーズのKentaのレビュー・感想・評価

4.9
色々な悩みに振り回される、青春真っ只中の高校生を変えたのはブルース・スプリングスティーンの曲との出会いだった…。一人のアーティストの影響により、人間関係や夢など変化していく青年の姿を描く。そして、今作は実話に基づくものとなっている。

1987年のイギリス。田舎のルートンで生活をしているジャベドは幼馴染のマットと仲良くしていた。だが、パキスタン人で移民差別を受けるジャベドは、マットのように青春を謳歌できず、孤独に想いを日記にぶつけることばかりをしていた。彼は無意識にそれを長年継続していたのだった。
高校へ入学することになったジャベドは、厳格な父親の注意をよそに、少しずつ楽しい日々を送っていく。そんな時に学校で出会ったループスが貸してくれたのは、ブルース・スプリングスティーンの2本のカセットだった。彼との出会いはジャベドを変え始めるのだった。
しかし、現実は厳しく、就職による将来への不安や人種差別、変化の激しい家庭内環境などジャベドを取り巻く問題は多々あるのだった…。

人を変え、人生をも変える"音楽"。
僕自身も音楽大好き人間のため、ジャベドの心の変わり模様にはスッと感情移入できた。好きなミュージシャンの曲を聴いてるとなんだか自分は主人公になっているかのような感覚。ジャベドは純粋な子のため、それで心を動かされ夢を叶えたのだろう。実話に基づくのだから、"音楽"は人を動かすってのは嘘じゃないんだと思った。

明るい部分のみならず、暗い現実も描く。
パキスタン人で移民という、それだけで差別を受ける時代。作品の背景に、1980年代のイギリスというのがあるため、その時代背景に沿ったリアルな扱いをこの目でしっかりと見てしまった気がする。映画作品のため、当然マイルドになっているだろうが、現実はもっと酷かっただろう。家族の突然の解雇や人種差別のデモ等…。それでもめげない彼らの姿に感動してしまった。それら全てひっくるめて、最後のスピーチは目頭が熱くなる。一度落ち込んでもすぐに立ち直り、想いを書き続ける強いジャベドに心打たれ、鑑賞中は数回涙が出た。
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