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ディエゴ・マラドーナ 二つの顔のRIKAOのレビュー・感想・評価

4.8
心優しい青年ディエゴと絶対に弱さを見せない虚構の人マラドーナ・・二つの顔
500時間にも及ぶ秘蔵映像が ナレーションなどは無く 当時のマラドーナの言葉や関係者のインタビューで時系列に綴られる彼の波瀾万丈の人生 何故彼がマラドーナと成らざるを得なくなったのか そのターニングポイントでもあるナポリ入団の頃をメインにとても丁寧に描かれている
ドキュメンタリーではありながらも ディエゴ・マラドーナ本人が役を演じているかのような作りに惹き込まれる

怖いなと思うのは民衆の集団心理持ち上げておいてたたき落とす様な手のひら返し W杯を挟み今まで神格化していたマラドーナを何処までも追い詰めるメディア 大変だったんだろうな・・心から同情して最後には涙した こんなに浮き沈みのある人生生き抜いたディエゴ・マラドーナ あなたのいない世界は寂しい こんな選手は時代的にもう出てこないだろうなぁ 
肉体的にも有利なわけではなく頭の良さとひらめきの光る素晴らしいプレーの数々・・天才とはいえ努力も大変な事だったろう
天国で安らかに楽しくサッカーしてるだろうな

ドキュメンタリーなのでネタバレしながら以下忘備録(あらすじ知りたくない方は読まないでね) 

1960年ディエゴはアルゼンチンの特に酷い貧民地区ブエノスアイレス南部で産まれた 父親は朝の4時から働く肉体労働者 自分は5番目の子供で長男サッカーボールは一番の遊び道具であったディエゴは11歳でサッカーチームに入り15歳でプロ契約をする この若さで一家の大黒柱となる 名門ボカ・ジュニオルスからスペインのバルセロナへ渡る 左足首骨折の大怪我をしてしまう 史上最高額の移籍金額で払いナポリに入団が決まる1984年7月熱狂的な8万5千人のサポーターの出迎えで入団会見

W杯メキシコ大会 フォークランド紛争での事もありイギリスとの試合は熱狂的 アルチン対イングランドはディエゴの神の手ゴールと5人抜き伝説のゴールで勝ち アルゼンチンは西ドイツに勝ち優勝する この頃ディエゴは恋人以外の女性に子供が出来た問題で悩んでいた スタッフとして父親が参加し裏方でBBQを手伝ったりと優しそうな笑顔 
そして86−87シーズンにはナポリに初優勝をもたらす しかし有名になったディエゴに闇が近づくマフィア 彼らファミリーのパーティに呼ばれ 「私たちがあなた達を守ろう」と言われ何となく安心感があった

優勝した事により神格化されあまりにも熱狂的なナポリの人々に身動きが取れなくなり息苦しさを感じるディエゴ 長年フィジカルトレーナーをしていた人が 「ディエゴは素直で心優しい人物であるが マラドーナは決して弱味をみせない虚構の人物 徐々に自分達の知っているディエゴは消えマラドーナに支配されてしまうようになってしまったんだ」マラドーナはマフィアからコカインをもらい女性と遊び徐々に闇へ落ちていく 

心身共に疲弊したマラドーナはナポリを離れたいと思ったがナポリの会長が離さずナポリにとどまる事になる
1990年 2回目のリーグ優勝のナポリをへてW杯イタリア大会 なんと準々決勝はアルゼンチン対イタリアしかもナポリのホームスタジアムでやると・・運命のいたずら

マラドーナは試合まえインタビューで「僕はナポリで2回優勝に貢献したし ナポリの人は僕を応援してくれるといいな」たわいもない発言に イタリア人とナポリ人を分断したとメディアは大騒ぎする 試合当日イタリアとはP K戦となり ここで決めるとイタリアとは関係が終わる・・と思われながらもP Kを見事に決めアルゼンチンが勝つ しかし決勝では西ドイツに敗退し2位

この頃からイタリアはマラドーナを見放してゆく メディアは彼を追い詰める マフィアまでも彼とは離れ 今まで大目にみられていた薬物の問題も見逃されなくなり 1991年コカイン陽性反応で15ヶ月の出場停止となる 
同じチームのチロ・フェッラーラーは「彼と共にプレーした事は忘れないし 僕の心の中では彼への気持ちはなにひとつ変わらないんだ」(泣いた・・チロ本当にいい人だよ彼の大変さを間近で見てきたものね)
アルゼンチンへ帰国するが コカインと買春で逮捕される 司法取引になったものの刑事罰はついてしまった 

時は流れ引退後かなりふっくらしたマラドーナがTVに 今は更生施設で豚小屋のような所にいるんだ でも家族はとてもよくしてくれるし心配かけてしまって・・と涙ぐむ
最後には若い男の子の姿 ナポリで産まれた当初自分の子と認めなかった息子だ マラドーナは扉を開けてハグをし頬にキス 息子も笑っている とても幸せそうなディエゴ(ここでも泣いた・・)

エンドロールの写真の数々がとても良い
他イタリア黄金期セリエAの選手達が映像に出て来る出て来る
ロベルト・バッジョ 、プラティニ、、チロ・フェッラーラー、バレージ、アンチェロッティ、ビアリ、マルディーニ…懐かしくて叫びそうになったのこらえたわ
サッカー好きなら是非観て欲しいな
純粋で優しい青年ディエゴ・マラドーナ
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