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Winnyのkomugiのネタバレレビュー・内容・結末

Winny(2023年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

懐かしのWinny事件の映画化。典型的な「ひたむきな市民 vs 権力の横暴」の構図で理解しやすくはある反面、映画としてはやや物足りなさが残った。作中では杜撰な捜査・起訴を行ったように描かれた京都府警・地検側の背景や、二審の逆転無罪判決に至る過程といった、事件や裁判そのものを深堀するストーリーを期待してしまった。

並行して進む愛媛県警の裏金問題について、弁護団メンバーの「Winnyが仙波さんの告発に貢献した」という台詞につなげるのはミスリードに感じた。重要なのは意図しない流出によって不祥事が暴かれることではなく、匿名性が高い発信手段があれば仙波氏のような告発者が不利益を被るのを回避できる可能性のほうであるはず。当時流行したマルウェア被害がWinny自身のせいではないのと同様、敵に都合が悪い情報漏洩もWinnyの功績とは言えないからだ。

凶器として使われたナイフの製作者は罪に問われるかという例えは、極端な単純化によって何かを誤魔化されているような気分になる。仮にあらゆるドアを開錠できる鍵を開発できたとして、これを不特定多数に配布することの影響、特に負の側面の大きさを予見できない人はいないだろう。予見できただけでは幇助にあたらないという司法の判断は納得できるものだが、行為の是非についてはナイフの例よりも意見が分かれるのではないか。

無邪気な天才を演じ切る難易度が高いのか、無邪気さだけが前面に出すぎていたのが残念。金子氏本人の言葉で締めるのはよいラストだった。
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