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Winnyの映画見る用アカウントのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
3.9
不出世の天才プログラマー金子勇が開発したWinnyを巡る裁判と、それにより流出した警察の犯罪を巡る事件がうまく結び付けられていて、とても奥行きのある内容だった。
演技派揃いだし東出も結構ハマっていて見応えがあった。
この映画を観た後実際にWinny事件について調べてみたが、非常に胸が悪くなった。ソフトウェアを悪用する側だけでなく、開発者まで逮捕するという無理やりさ、予め書いたシナリオを押し通そうとする検察のしょうもなさ、金を稼げる見出しを付けることのみ考える週刊誌、どれを取っても不愉快だった。100歩譲って一時的に身を取り押されられるのはまだ理解できるが、これがそのまま最高裁までもつれ込むまで正常な判断が下せない司法には呆れるばかり。
もちろんこの作品は金子氏に感情移入するように出来てるので、今の自分の感情もそちら側になっている。ただ現在P2Pはビットコインの取引といった匿名性の高さを求められるシステムに一般的に用いられているし、それはつまりこの技術の有用性が認められているということである。
にもかかわらず当時の日本は国家ぐるみでこの素晴らしい技術の「著作権の侵害に利用され得る」要素にしか目を向けず、抑え込むことに全力を尽くしたのである。
万が一金子氏に悪用の意図があったとて、それならそれで政府が悪用できない仕組みを整えつつ良いところは伸ばしていくよう支えるべきでは無いのかと思った。
同時に、このような保守的で視野の狭いやり方をしているからこそ、日本はソフトウェア後進国になったのだろうなと容易に理解できてしまった。
エンドロールで流れる金子氏のインタビューから伝わる想いを無駄にしないで欲しいな。