『世界の一部』
舞台挨拶付き上映会にて鑑賞。
登壇者は衛藤美彩さん。本当に美しく、凛としていらっしゃいました。
それと同時に理知的で的を得たトークにより、この作品の理解が深まり、素晴らしい時間を共有させていただき、感謝しています。
ほとんどの人物にバックグラウンドが見えてこず、ぼんやりとした印象を受けるのも否定はしないが、それに対して批判的意見を向けることは間違った作品。
人それぞれの違う世界と違う世界の重なり合い、見えるものが全てではないがその重なり合いで世界ができている。一部分しか見えない世界でも信念を持って生きていく。
静かな雨が上がる頃、観ている私達が力強く背中を押されるようなメッセージを受け取ることだってできる作品である。
中川龍太郎監督らしい美しい映像とセリフとセリフの間にある余白は、見るものの考えにも余白を与えてくれる。
過去作品に比べてもこの余白が効いてくる題材。
映像表現やラジオ、小道具の仕掛けについても考えの幅が広がる。
衛藤美彩さんがこの映画から受け取るメッセージの中で
「思い出を残すのではなく、思いで生きていく。」
とおっしゃっていたことが印象的。
見えるものだけ、思い出に残すことだけが全てではない。
この作品を見るときにもそんな優しい眼差しでぜひ観て欲しい。