ShinMakita

12番目の容疑者のShinMakitaのレビュー・感想・評価

12番目の容疑者(2019年製作の映画)
1.7
1953年、ソウル・明洞。
静かな喫茶店「オリエンタル茶房」には今日も常連たちが集まっている。顔ぶれは詩人・小説家・画家などの芸術家ばかりだ。神妙な顔をして席についた若き画家パクの前に、酒好きの詩人ビョンホンが座り、仕入れてきたばかりのニュースを披露する。…昨夜、南山の崖でオリエンタルの常連の1人ペク・ドゥファンが死体で見つかったらしいと言うのだ。と、そこに、身なりのいい初めての客が店に現れた。男はコーヒーを注文すると、ビョンホンたちの噂話に割り込んできた。男は「陸軍特務部隊上士のキム・ギチェ」と名乗り、昨夜のペクの死を捜査中だと言う。ついては、常連の皆さんからペクさんについて話を聴きたいというのだ。


「12番目の容疑者」

以下、時代が逃したネタバレを捜せ。


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売れっ子で、他人と親しくならなかった詩人ペクが何者かに射殺された。傍には、同じく常連の女子大生ユジョンの死体も…誰からも妬まれ嫌われていた男と、誰からも愛されていた女を同時に殺したのは誰か⁈ という密室会話劇。タイトル通り、めちゃくちゃキャラが出てきて覚えるのが大変。「MONOS」や「エターナルズ」よりもめんどくさいですよ。何せみんな韓国人だし。

(客)
暗い顔の画家キム
酔いどれデブ詩人ビョンホン
鼻炎詩人ムン
連載を打ち切られた小説家チャン
なぜか頭に包帯を巻く画家ギソプ
その弟分の詩人ヒョクス
謎の大学教授シン
怒りんぼ詩人オ先生

(店)
足の悪いマスター
切り盛りするマダム

という、とりあえず10人の店関係者に、1人の捜査官で、キャラが11人出てきますね。ではタイトルの12番目って誰よ?ってことになるわけです。

以下、ガチネタバレなんで未見の方は注意↓


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普通のミステリなら日本でリメイクなんかもできそうですが、本作は無理。これは韓国ならではのストーリーですから。日本統治下の太平洋戦争と、陥落占領を経験した朝鮮戦争という2つの出来事が相次いだことで、この殺人事件が起きてしまったのです。12番目の容疑者とは、俺が思うに「時代・歴史」のことではないかと。ま、ユジョンが12番目でもいいんですけど。

オチの暗さ・絶望感が、ミステリの余韻とは全く違い、まさに韓国ノワールのそれでした。日本人は複雑な気分になるけど、観て損はなかった一本。主人公キム・ギチェの前半と後半の違いがあまりに凄くて、少し引きました…
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