虎舞羅ーコブラー

糸の虎舞羅ーコブラーのレビュー・感想・評価

(2020年製作の映画)
4.0
DVD鑑賞会という事で、普段見ないジャンルを鑑賞。

中島みゆきのヒットソング『糸』を原作とし、幼い頃に引き離された二人の歩んだ波乱万丈の人生と出会い、そしてもどかしいすれ違いを描くヒューマンドラマ。
平成元年生まれの漣と葵の人生を、令和になるまでの時の流れを感じさせながら描いていくタッチが印象的でした。その時代に流行った歌が流れたり、ガラケーからスマホに移り変わっていく流れと共に、私たちも流れ流される情景を感じられましたね。
上質なストーリーや演出をより際立たせる、北海道を始めとした自然の美しさも印象的。漣は田舎で、葵は都会で暮らしそれぞれ苦悩する姿が対比されているようでした。
特に感動したのが、漣の娘さんが教わり実行する「泣いてる人がいたら、優しく抱きしめられる人になりなさい。」という言葉。そしてその言葉で、最終的に二人の糸が繋がっていく…という構成も素晴らしいです。

『糸』は、歌詞にある通り一人で紡ぐものではない。どんな形でも、出会いによって紡がれていく。それが、協力的なもの、もしくは裏切りであっても、最後には一つに繋がる。
〈縁〉はある意味〈糸〉とも言えるだろう。ただ時の運によって決められているのではない。自分の決断、そしてそれによる出会いで、少しずつ、少しずつ長い〈糸〉になっていく。しかし、私たちは何も知らない。
「縦の糸はあなた、横の糸は私。織りなす糸はいつか誰かを、温めうるかもしれない」
いつかの誰かのとの出会いは、今まで出会ってきた人のおかげでもある。その出会いで、その織りなした糸で、これまで出会った人々を温める。
そんな〈出会い〉と〈糸〉に、私は憧れた。