やもさん

糸のやもさんのレビュー・感想・評価

(2020年製作の映画)
3.3
現代における恋愛の多様化。
現在では、マッチングアプリで恋人を作るのが主流になりつつあるとかないとか。
果たして、そんな現代の恋愛事情に運命的な出会いは存在するのか。
"運命の赤い糸"とは何なのかー。
それを解き明かすヒントを得るため、私は映画館へと足を運んだ。

多くの世代で歌われている、中島みゆきの"糸"。




すみません。
カラオケで友人がこの曲を歌っているのを聞いたことあるくらいで、歌詞に注目したことすらない私です。

本作を鑑賞して結婚について色々と考えさせられた。
「結婚をするなら2番目に好きな人と。」という意見を聞くが果たしてそれは本当に幸せなのだろうか。この作品を鑑賞して改めて自分に問う。
2番目に好きな人との結婚は妥協なのか。
仮に妥協で結婚したとして、妥協の中にある幸せは自分が望んだ幸せか。
例えばマッチングアプリでの出会いは運命の糸と言えるのか。
改めて自分が恋愛に関してかなりのロマンチストという事実を認識した。
そんなロマンチスト野郎の私からしたら、本作における中学生編の物語はめちゃくちゃ好き。秒速5センチメートルを彷彿とさせる。

さて、映画全体としての感想を述べると、脚本がイマイチだった気がする。一々説明的で丁寧過ぎる。それ故に次の展開が容易に想像できてしまう。
もうコレさ、2人は糸で繋がっている、というよりは、予め引かれたレールの上を歩かされてる、という感覚に近い。
まぁ、そんな2人の恋愛模様を平成史と共に振り返るのが本作のコンセプトなのだが、平成史が薄過ぎる。
主人公格の2人が直接的に平成における事件に巻き込まれストーリーに絡んでくるわけでもなく、事象の引き立て役は常に友人Aこと成田凌と成金こと斎藤工。
主人公格の2人が見えない糸で繋がってるというのなら、周りの人間がフラグを立てる発言をしたり、互いを煽てるようなことしなくていいのに。平成という時代背景からリアリティを出そうとしているのに、そういうところでリアリティに欠けてしまうのが勿体ない。だったらもうこのストーリーいつの時代でもええやんって話。


主役2人の演技は素晴らしい。
菅田将暉は言うことなし、安定感ですね。
小松菜奈は圧倒的なオーラがあるわけでもないけど確かな存在感があって惹かれる。
カツ丼を食うシーンは圧巻でした。
うん、カツ丼を食うシーンは本当に良かった。この作品で一番良いカットだよ。

ロケ地を海外に設定してしまった為に、費用が無駄にならないよう最大限活用しようとしたが、詰め込みすぎで中弛みを感じざるを得なかった、マレーシアでのアレコレが昇華された良いシーン。そりゃ小松菜奈も涙出ますわ。その最後にクソまずいカツ丼食わされたら流石に涙出る。

クソ落ち込んでいる時に、追い討ちをかけるように目の前に現れるクソまずカツ丼。
むしろ、それが再起のスイッチとなる。
人間が本当の地獄から這い上がる時に必要なのは、飴でなく鞭なのだと。もう、そういう年齢でもないんだよな。ご褒美で簡単に頑張れてしまうほど人間は単純じゃないんだよ。
やもさん

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