金宮さん

おろかものの金宮さんのレビュー・感想・評価

おろかもの(2019年製作の映画)
3.5
両親を早くに亡くし兄と二人で生きてきた女子高生の洋子。まもなく結婚を控える兄だったが、その兄が美沙という婚約者とは別の女性と浮気をしていることに気づき、洋子は美沙のもとになんとなくの怒りと共に突撃する。とくに言いたいことも見つかっていないのだが。

ただ、そもそも洋子は兄の結婚相手である果歩がどことなく気に入っていないため「浮気→よくない!」程度の正義感はいずこへか、じわじわと美沙との距離を縮め、なんなら結婚式ぶち壊したりましょ!的に結託することとなる。

一見、不思議な関係性を通し、前述した「なんとなく」「どことなく」という感情を解明していく。それにより、人間関係が広がり深掘りされていく様は思春期ムービーとして新しいアプローチだなーと思った。

清廉潔白原理主義だけじゃ立ちいかないこともあるよね。浮気って双方悪いみたいになりがちだけど大体そんなことないよね。みたいな考えに洋子はやんわりとシフトしていく。

最終的に生まれた不思議な友情も、今後長いこと続くいい関係になりそう。思い込みから解放されると素敵な人間関係の可能性が広がるのかもしれない。

ーーーーーーーーー

さらに巧みだなと思ったのが、洋子の話し相手として中国人留学生のシャオメイというキャラが存在すること。

ことの顛末をすべて話す相談相手でもありながら、洋子はシャオメイの日本語の先生でもある。そうすると、非常にナチュラルな流れで「それってどういう意味?」と洋子は尋ねられるので、自然と独白が発生する。説明過多にならないかたちでの心情吐露を可能にする設定。目から鱗でした。
金宮さん

金宮さん