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ジョアン・ジルベルトを探してのxyuchanxのレビュー・感想・評価

3.4
彼を理解できると思うな。

1957年、その男は居候していた姉の家のバスルームで、ギター1本と自らの歌だけで成立するミニマルかつポータブルな音楽を産み出した。

サンバのリズムと繊細なコードワークをギターだけで紡ぎだすバチーダを発明しボサノバを作りだした男、ジョアン・ジウベルト。2008年以降、表舞台には一切現れず隠遁生活を続けている。

あの伝説の来日公演で、観客たちが"まさかお亡くなりになったのでは?"とザワついたステージ上での瞑想シーンが忘れられない。僕もひょっとして?って思ったもんな😁


この映画は、原作本を書き終えてすぐ40歳で亡くなったドイツ人作家マーク・フィッシャーの足跡をたどり、彼と同じようにジョアンを探しさまようストーリー。

旧知のミュージシャン達も、もう45年会ってないとか、15年無駄にしたとかのたまう。元嫁のミウシャや、床屋、料理人たちも彼の居所については口を固く閉ざし、協力的に見えつつも、取り次ごうとはしない。

ジョアンは元来、マイペースで偏屈な人間であり、あの呟くような歌い方は大衆にウケるものではなかったはずだが、アントニオ・カルロス・ジョビンとヴィニシウス・ヂ・モライスとの出会いにも恵まれ、1958年「Chega De Saudade」で世界にボサノバ=”新しい潮流”を発信する。バスルームからほぼ世界に直結である。

歌姫アストラッド・ジルベルトとの結婚、スタン・ゲッツとの共演、劇中でも元嫁ミウシャと、娘ベベウ・ジルベルト、ジョアン・ドナート、ホベルト・メネスカル、ジョアン・ボスコ、カルロス・リラ、マルコス・ヴァーリまでが登場し、彼らの家などでジョアンとの繋がりを語ってくれている。ミュージシャンたちの家、とくにメネスカルの家がとても素敵でしたね。

ヴィニシウスとジョビンが隣同士の墓にはいってるなんて。そしてなんとあの日本ツアーも人づての手紙で実現したのだそうな。

あの電話、ホテルの部屋の前、なんとも煮えきらないのだけど、花のない主人公の薄い存在感もオツなもの😁


”果たせなかった想いが付き纏って離れない”

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代表曲:
・想いあふれて / Chega De Saudade
・イパネマの娘 / The Girl From Ipanema
・デサフィナード / Desafinado
・フェリシダーヂ / A Felicidade
・静かな夜 / Corcovado

アルバムではダイレクトに彼の魅力が味わえる全編ギター弾き語りの「João voz e violão」がオススメ。2000年、カエターノ・ヴェローゾのプロデュース。

なお、この作品はボサノバを体系的に知れる内容にはなっていないので、ちゃんと当時の時代背景やボサノバの事も知りたいのであれば、この辺りの映画から見るほうが良いかもしれません。

「This is BOSSANOVA」
「ヴィニシウス 愛とボサノヴァの日々」
「アントニオ・カルロス・ジョビン 素晴らしきボサノヴァの世界」


Saudade
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