【A.T.ホワイトを覚えておいてください】
映画忘年会で、本作をベストに入れていた方がいた。一風変わった『アイ・アム・レジェンド』な本作は、A.T.ホワイトという方のデビュー作なんだとか。
早速観てみました。
A.T.ホワイトとは何者なのか?調べて観ると、アルバムやゲーム体験を創るメーカー"We Are Tessellate"の共同マネージャーにして、ゲーム実況者、UKバンド"Ghostlight"のヴォーカルなんだとか。インタビューを読むと『人狼―JIN-ROH―』や『もののけ姫』といったジャパニーズアニメーションが好きというサブカルオタクである。
そんな彼が自分の感性を炸裂させた本作は、映画的興奮に満ち溢れていた。
主人公オーブリーは親友グレースを失い、その哀しみ故、彼女のアパートに忍び込む。次の日、街に人気がなくなっていることに気づく。そこに、男が現れ、そのまま何かに怯えるように逃げていくのだ。
彼を追うオーブリーは、怪物と対峙する。しかし、観客には全くその正体は見えない。見えざる不気味さにハラハラドキドキしていると、突然無線がかかるのです。
「おい、聞こえるか?俺の言うことを聞け!目を閉じて扉へ向かうのだ」
おいおい、扉の方って怪物が荒れ狂っているところではありませんか!しかし、言うことを聞くと怪物はいなくなるのだ。
通常、この手の一人サバイバルから、仲間が現れるタイプの作品では、互いに協力して地獄を乗り越えていく。しかしながら、オーブリーは何故か、中盤から声の主をシャットアウトし、カセットテープを集めて内なる世界に引きこもり始めるのだ。
THIS MIXTAPE WILL SAVE THE WORLD.
という言葉は、他者のいる世界に向いておらず自己に向いていたのだ。
これは、喪失感を抱える者が一人になりたいけれど、誰かに構ってほしい厄介な心情を描いているといえる。だからこそ、段々怪物に物怖じしなくなる。そして、自分の世界を強調する為に、途中からアニメになったり、フォースを覚醒させ異次元へ飛び込むのだ。
デビュー作にできることは全てねじ込もうとするA.T.ホワイトのパワーは、意外なことに丁寧で繊細な感情の爆発となっている。
これは何としてもでも日本劇場公開してほしい。映画館でまた観たい!
というわけで、皆さんA.T.ホワイトという名を頭の片隅にでも入れておいてください。化ますよ。